英雄の光 ページ12
刹那、光が化物を突き刺した。
「……は?」
オシストの眼前、魔法の詠唱を終えんばかりの瞬間に、化物は困惑と共に続く炎により吹っ飛ぶ。
「ギャァッ!? 熱い、熱い、痛いぃぃ!?」
「こ、れは……!?」
化物を包み込み、悲鳴を上げるその身体をボロボロの灰へと変えていく。
そして、その全てにオシストは心当たりがあった。
「……大丈夫か」
息を飲んだ直後、背後から声がする。
咄嗟に振り向き、目を見開く。
気付けば涙が溢れていた。
ぼさぼさになり、ほとんど伸び放題ながらも独特の風格を醸し出す緑の髪。
ハイライトこそ無いものの、それでも確かな決意と情熱の籠った赤と黄色の瞳。
優しくも鋭い、かつ静かな目線。
穏やかだが感情の入り交じった、心地よい声色。
パーカーではなく、目立ちすぎずかつ彼の魅力を最大限引き立てる和服。
そしてその上から羽織るは闇に溶ける程の漆黒のコート。
間違いない。
姿こそ違えど、あれは正しく……
「っ、う……マールド、さぁん……!」
マールドそのものだった。
「……オシスト……」
よたよたと彼に近付けば、そっと抱き寄せてくれる。
「よかったっ、よかったぁ……よかったですぅ……!」
「心配させて悪かった……」
「本当ですよ!」
プンプンと精一杯怒ってみせるが、それでも溢れる涙と彼が生きていた喜び、ようやく会えた感動が全てを押し流していた。
背中と頭を撫でてくる彼をぎゅっと抱き締め、涙ぐんではその胸板を力無く叩く。
「うぅ……マールドさぁん……」
少女の号泣は、月明かりに照らされいつまでも続いていた。
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アスナ(復活)(プロフ) - 作品見ました!すごい面白くて引き込まれちゃいました! 更新頑張って下さい! (12月10日 11時) (レス) @page41 id: bbcff10712 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ugt8ragist4/
作成日時:2023年6月25日 8時