☆ ページ33
キィ、とブランコの軋む音。それから歩く音。
こちらの方へ足音がやって来たから息を殺せば、足音はまた遠ざかっていった。
チラリと見たAアメ先生は、思ってたよりもずっと可愛い、普通の若い女性。
あ、出れるかな、今。
そう思ってブランコの方を伺い見れば、男性らしき人影は見当たらない。よし。ようやく遊べる、じゃなくて出れる。
どうせならとすべり台を滑ることにした。
足を伸ばして滑ってみれば、案外早い。よっこいせ、と立ち上がって。後ろを向く。
「ひっ!?」
「うぉっ、驚くなよ〜!」
なんだなんだ。なんか物凄い高身長イケメンが私を見て笑ってる。というかこの声、さっきの声では。
「な、なにか……?」
いや不審者なのはお前だよ、と盛大に心の中のツッコミが私に叫ぶ。なにか、じゃないから。
片やすべり台の近くにいた、先程まで人を励ましていたイケメン。片やすべり台の中から出てきた、いつから居たか分からないモブ。
絶対言葉の選択肢はミスしている。
「いやぁ、聞いてただろ?」
「……す、すみませんでした!」
バレてた。すみません悪気はありません。
カツアゲ、脅し、まで頭が進んで、そっと財布の中身を思い出す。けれどイケメンは笑うだけ。
「なんだ? お前もなんかあったのか?」
「い、いや、私は特にそういうことでは……人が来て出れなくなった、というか……」
あぁ、とイケメンは呟いて、そして笑う。
ごめんって。別に悩みも無く能天気に夜8時の公園で遊ぼうとする人間だっているんだよ。
「あ、あの、でも!」
イケメンは、「ん?」と笑いを止める。いや本当にイケメンだな。なんだこのイケメン。
「Aアメ先生の作品、好きなので……あの、読者としても、励ましてくださって、ありがとうございます……!」
励ましてくださって、なんて超絶失礼な上から目線に気づいても、後の祭りで。けれどイケメンはそんな日本語ミスも気にしないようで、にっかりと笑った。
「あぁ! Aのこと、これからも応援してやってくれ!」
うわ、凄いこの人。心の底から良い人間だ。
キング、なんて変なあだ名も、なるほど。
確かに。ものすごく似合う。
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ツキノワ。(プロフ) - るしゐさん» 返信が遅くなり申し訳ありません! 一般人視点、書くのは楽しかったのですが読んで下さる方がいるのかなぁと思っていたので嬉しいです。ありがとうございます! (4月9日 18時) (レス) @page49 id: e6cc4ca720 (このIDを非表示/違反報告)
るしゐ - こんにちは〜!時差コメですみません…。ツキノワ。様の小説大好きです!!一般人視点、新しくて好きです〜!素敵な小説ありがとうございました! (2月11日 9時) (レス) id: 3376040ee3 (このIDを非表示/違反報告)
ツキノワ。(プロフ) - アイレさん» こんなに古い作品にコメントありがとうございます!読んでくださるだけでも嬉しいのに、コメントまでくださるなんて嬉しすぎます〜! (12月29日 23時) (レス) id: e6cc4ca720 (このIDを非表示/違反報告)
アイレ - え……まさかのパラドがいる!!え…めっちゃ新しい視点で物語読むの想像してた以上に楽しい……素敵な作品ありがとうございます!(*‘ω‘ *) (12月29日 19時) (レス) @page47 id: 2f4437d82e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ツキノワ。 | 作成日時:2019年11月12日 21時