☆ ページ32
「私……『らぶタッチ』が連載してる雑誌、『少女こずみっく』で、連載を1年程前から始めたんですけど……」
小さく、弱々しい声が話し始める。
それは私の知る、あのほのぼのと平和で、日常に安らぎをくれる作品を創った人とは思えないくらい。
「今、スランプで……」
初めて知った、その事実。
きっと、人によっては『そんなこと』と思うかもしれないけれど。私はその気持ちの、ほんの少しだけでも、分かる。
イラストを描くのが好きだ。さらにそれを評価してくれる人がいると、飛び上がるほど嬉しい。
だけど、思うように描けない。上手く出来ない。
出来ていたことが出来なくなる。なんだかそれは、心に鉛が入ったように辛くなる。
「やっと、軌道に乗り始めて、単行本も何冊か出せて、これからなのに……」
私ですらそうなんだから、あんな凄い雑誌で、この若さで連載なんてしてるAアメ先生なら。
その辛さも、人一倍だろう。
「全然キュンとできるシチュエーションが思い浮かばなくて……大まかなストーリーは決めてるんですけど……」
あぁ、そんなに悩まないでください。
私達は、何も漫画だけ読めれば良いワケじゃないのに。先生達の体は、私達にとっても重要なのに。
「そうか……俺にはよくわからねぇ!」
ハッキリと聞こえたその言葉。
でも、それは冷たいとか、突き放すとかでは無かった。
「でも、Aの少女漫画に対するブレイブは伝わった!それはきっと読者も同じだ!」
男性の言う通りだ。Aアメ先生の、漫画に対する想いは。絵とか、巻末の一言とか、SNSを通じて。
ちゃんと伝わっている。
「だから無理せず、たまには1日漫画のことを考えなくてもいいんじゃないか?」
そうです。大丈夫ですよ、先生。
そんなに思い詰めないでください。大丈夫だから。
「そうだ、良かったら俺の仲間に会ってみてくれ。ブレイブな奴らだし、なにか力になれるかもしんねぇ」
男性がそう言うと。
暫くしてから、さっきよりずっと大きな女性の声。
「明日だけ、休んでみます……!」
ぜひ、ぜひ。そうしてください。
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ツキノワ。(プロフ) - るしゐさん» 返信が遅くなり申し訳ありません! 一般人視点、書くのは楽しかったのですが読んで下さる方がいるのかなぁと思っていたので嬉しいです。ありがとうございます! (4月9日 18時) (レス) @page49 id: e6cc4ca720 (このIDを非表示/違反報告)
るしゐ - こんにちは〜!時差コメですみません…。ツキノワ。様の小説大好きです!!一般人視点、新しくて好きです〜!素敵な小説ありがとうございました! (2月11日 9時) (レス) id: 3376040ee3 (このIDを非表示/違反報告)
ツキノワ。(プロフ) - アイレさん» こんなに古い作品にコメントありがとうございます!読んでくださるだけでも嬉しいのに、コメントまでくださるなんて嬉しすぎます〜! (12月29日 23時) (レス) id: e6cc4ca720 (このIDを非表示/違反報告)
アイレ - え……まさかのパラドがいる!!え…めっちゃ新しい視点で物語読むの想像してた以上に楽しい……素敵な作品ありがとうございます!(*‘ω‘ *) (12月29日 19時) (レス) @page47 id: 2f4437d82e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ツキノワ。 | 作成日時:2019年11月12日 21時