恋を彩る音楽達【特撮短編集】

乾巧×君の目も鼻も口も顎も眉も寝ても覚めても超素敵!!! (ﾘｸ) ページ30

SHISHAMO/君の目も鼻も口も顎も眉も寝ても覚めても超素敵!!!

「おかしい」

まだ半分寝惚けたままの頭でぼんやりとテレビを見ていた時、私の口からはほぼ無意識にそんな言葉が滑り落ちていた。視線の先には話題のイケメン俳優とかかれたテロップと、その人らしき青年。

「なにがだよ」

ふーふー、とコーヒーを冷ましていた巧は、コーヒーを少し揺らしながら私の隣に座った。ソファの上、肩が触れるこの距離が愛おしい。……って、そうじゃなくて。

「私、この人より巧の方が断然かっこよく見える」

「……そうかよ」

そうなの。このイケメン俳優と名乗る人より、というか街を歩いてるどの男よりも。どこを見たって巧がナンバーワン。それにね、おかしいのはそれだけじゃなくって。

「それにさ、ずーっと巧のこと大好きなままだし、未だにドキドキは落ち着かないし、巧のかっこよさにもまだ慣れない。寝ても覚めても超素敵に見える」

巧は嬉しがるどころか若干引いてる気もするけど、全部全部本当。そりゃぁ長く付き合ってるから喧嘩もするけど、正直顔で許しちゃう。そのくらい好き。全人類に自慢したいもん。あ、触るのは無しで。私自身はつまらない平凡な女だけど、巧への気持ちなら今世どころか来世でもナンバーワンになれる。
でもこんなに素敵な巧が選んだのは私な訳で、あれ、それって誇りかも。こんなに素敵な人が選んでくれたから。

「どこが好きなんだよ」

話に興味があるのか無いのか。巧はぶっきらぼうに、けれど横目で見て私に尋ねた。好きなところ、そんなのいっぱいあるけど、外見なら……。

「目も鼻も口も顎も眉も超素敵！ 起きる度新鮮に大好き！」

出来ることなら、指でなぞってその輪郭や触感、温度や湿り気全てを覚えたいけど。流石に口に出しては言わない。巧が既にドン引きしているから。

「穴があくくらい見ててもいい？」

「好きにしろ。鬱陶しかったら言うからな」

「はーい」

じ、と見てみる。
顎のラインに鼻の形、意外と長いまつ毛と黒い瞳。唇がコップにつくその瞬間も、逃さず。

許さないけど、させないけど。こうして彼を覚えていよう。いつかくるかもしれない、私のものじゃなくなる時のために。

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