恋を彩る音楽達【特撮短編集】

木場勇治×きゅうくらりん (ﾘｸ) ページ13

きゅうくらりん/いよわ

「もう終わりにしなよ。その恋」

そう言っていた友達の、呆れるような視線が寝起きの頭の中をふんわりと漂っていた。ベットサイドの文字盤は8時を示していて、うるさいそれを殆ど目を瞑ったまま、片手でなんとか探し当ててアラームを止めて。一度伸びをして布団から起き上がれば、机に乗せられているメイク用の鏡に、いつも通りしらけた顔の私が居た。

あぁ、また今日が来ちゃった。

そんな感情で毎日憂鬱になってると言えば、彼は心配してくれるかな。心配してくれるだろうな。だって木場さんは、こんなに優しいから。


「あ、虹」

私のアパートまで送ってくれる、いつものデートの帰り道。木場さんは空を指差して微笑んだ。その顔にきゅっと心が絞られて、同時に少し痛む。でもそれは、悟られないように。

「綺麗だね」

本心からそう言った訳じゃなかった。でも、綺麗だと、木場さんと同じようにそう思いたかったの。ちゃんと笑って、ちゃんと取り繕って。私には大した取り柄も無いから。せめて木場さんと同じものを見てみたいの。それくらい好きなの。
でも、同時に、一緒には居られないの。

木場さんはオルフェノクで、私は人間だから。オルフェノクといくら共存出来ると言っても、私は異種族間のドラマも敵わない大恋愛をこなす自信は無い。それにね、夢があるの。

幼い頃からの夢。料理を美味しいって食べてくれる素敵な旦那さんが居て、ママー！なんて駆け寄ってくれる子供が2人くらい居て。そういう、普通の幸せが夢なの。みんなにはくだらない事だけど。

なのに貴方に恋をしちゃった。ダメなのに、どうしようもなく好きになっちゃった。心に育ったつぼみは、本当に愚かしいけど。

「夢は呪いか……」

「ん？ なに？」

「んーん。なんでもない」

☆→←左翔太郎×モニカ (ﾘｸ)

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す