13.静かで騒がしい朝 ページ14
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ふと目が覚めて起き上がる。
写真立ての置いてある棚の上。
チラッ……と時計を見ると長針は9を指していた。
毛布が少し捲れているから、潤くんは仕事に行った。
ということが分かる。
重たい腰をのっそりと上げて、洗面器に向かい顔を洗う。
リビングに行くと白と黒のモノクロの机の上に、おにぎりが二つ。
置き手紙の内容から、梅おにぎりということが読んで取れる。
「ありがとう、」
そう心で唱えて食べ始めた。
充電器に刺さるスマホを覗くと新着メール。
お母さんからのメールだった。
『じゃあ、出る頃メールしてください。通帳とある程度の服と下着、歯ブラシくらいでいいかしら。
…あ、あと財布ね。他にあったら言ってね』
一通り読んでスリープ状態にした。
ご飯一粒足りとも残さず食べて、洗い場に運ぶ。
……ってちょっとまてよ。
「着て行く服なくね？」
だって昨日の服は洗濯してるし、こんなハデハデな服で街歩けないし…。
どうしたらいいのよ……。
持って来てなんて言えないし、潤くんに電話。
番号知らない。
置き手紙をもう一度見ると、裏面にも何か書いてあった。
『p.s 洋服は寝室の棚の二段目、そこに姉ちゃんの服が入ってるのでそれ着ていいよ』
それを見た瞬間、叫びそうになった。
叫びかけた口を両手で塞いで、ありがとうって小さく言った。
寝室に、も一度入って二段目の引き出しを引くと、黒やピンク、青などの寒色系の色も入ってた。
私は一番好きな黒のズボンと紺色のトレーナー、灰色のパーカーを取り出して着替える。
こんなハデハデの服はもうさよならだ。
もう着たくもない、見たくもない。
・
今出る、という簡単な文を送って家を出る。
鍵をしっかり閉めて一歩を踏み出す。
一瞬だけ、暖かい風が吹いた気がした。
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作者名：成瀬
| 作成日時：2016年11月3日 10時
