Case.252 ページ8
薄暗い部屋の中で、カタカタとキーボードを叩く。
ふと窓の外に目を向けると、ほんの少し空が白み始めていた。
時計を見ると、時間は午前4時。
もうこんな時間か…。
ふわぁっとあくびをして、椅子の背もたれに体を預ける。
――情報共有といきましょう
そう言って、私はあの4人に今後の作戦や予想も含めて、話せるだけの情報を渡した。
ただでさえ遅い時間なのにかなり話し込んじゃったから、帰ろうとした零を工藤夫妻が泊まっていけと引き止めたくらいだ。全力で辞退してたけど、零も有希子さんの押しの強さには敵わなかったらしい。最終的には大人しく客間へ連行されてて、零を見たのはそれが最後だった。
多分まだ寝てるだろうけど…ハロのこともあるし、あと1時間もすれば起きてくるかな。
きっと早朝のうちに帰るつもりだろうから、このまま起きてれば見送りくらいできるはず。
白んでいく空を眺めながらぼんやりとしていると、不意にウトッと瞼が落ちかけた。
「…んー…」
小さく唸って天井を仰ぐ。
眠い。
作業は一段落ついたから、寝ること自体に問題はないんだけど…。
「…見送りするんだから、ダメ」
自分で自分を戒める。頭を振って無理やり眠気を飛ばし、手元に用意していたコーヒーを手に取った。一口飲めば、その苦味で少し頭がすっきりする。
パソコンの画面に目を戻せば、そこには世界地図と各国の諜報機関、そして組織壊滅の為に動いている捜査官達のリストが表示されていた。
「…やっと、ここまできた」
ノックリストもかくやというそのリストは、私がギムレットとして組織に潜入していた頃から少しずつ作り上げたものだ。
「やっと。…やっとよ」
呟いた声が、僅かに震えた。
これは――嬉しさ？
…いいえ、そんな単純なものじゃないわね。
素直にそう思えたのなら、私はこんなに苦しむことはなかっただろう。
嬉しくないわけじゃない。
達成感や興奮も、ないわけじゃない。
けれど。
それよりも、…私は。
―――“The time is out of joint.”
外れた関節を正す、その時を。
―――“To be, or not to be, that is the question.”
己に問い続けていた、その答えを。
「…私は、どうしたらいい？―――ミナト」
決断することを、恐れている。
.
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胡蝶(プロフ) - 来来（きままに更新）さん» コメントありがとうございます！一気読み頂いたうえにそんなお褒めの言葉まで…！嬉しいです…噛みしめますね…。さて、二幕も終盤でございます。遅筆ですが、どうぞ最後までお付き合い下さいませ！ (9月6日 0時) (
レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
来来（きままに更新）(プロフ) - ついつい一気読みしました。文章力もそうですがギムレットの感情、安室との絡み全てが好きです！尊敬します！ (9月5日 12時) (レス) @page45 id: b6c1688bfb (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 胡蝶さん» まさかお返事をいただけるなんて(；ω；)とっても嬉しいです！！もちろんお楽しみにしながら待ってます！！！♡ (7月25日 20時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - ゆいさん» コメントありがとうございます！そして、嬉しいお言葉をありがとうございます！タイムセールもお楽しみ頂けたようで何よりです笑 のんびり更新ですが、二幕も終盤に差し掛かりました。どうぞ最後までお付き合いいただければと思います。 (7月24日 23時) (レス) @page19 id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 卵のくだりがすごく面白かったです笑 (7月24日 22時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：胡蝶 | 作成日時：2023年7月10日 8時
