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Case.251 ページ7

パトカーのサイレンが去っていくのを見送って、私は小さくため息をついた。
そもそも事件の依頼があったわけだし、発生する確率は限りなく高いとは思ってたけど。
無事に解決したとはいえ、この街って本当に事件多すぎ…。

「…あの、Aさん」

遠慮がちに声をかけてきたのは蘭ちゃんだった。何故かしょんぼりと肩を落としてる。

「すみませんでした…私の我儘で巻き込んでしまって…」

どうやら事件に巻き込んでしまったことを反省してるらしい。

「気にしなくていいのよ?“恋人になった幼馴染の彼とどう接すればいいか”なんて初々しい相談、聞いてて楽しかったもの」
「ちょ、Aさん!」
「ふふ…進展の報告、待ってるわ」

そう言うと、蘭ちゃんは真っ赤に染まって沈黙した。
まったく、こんな可愛い子を放っておくなんて…罪な子ね。

ちらりと眼鏡のボウヤに目を向けると、バチリと視線が合った。何か言いたそうな顔をしてる。
そっと蘭ちゃんのそばを離れて歩み寄れば、ボウヤもさり気なく近づいてきた。

「どうしたの?」
「…安室さんのことなんだけど」

言われて、目の端で零をとらえる。懐かしむように目を細めるその理由は、事件の顛末を見ていればある程度の予想はつく。
…妬けるなぁ。

「やっぱり初恋相手かな。ボウヤはどう思う?」
「え、何の話…?」

どうやら話したいことが違ったらしい。

「安室さん、事件の捜査中にメールを見てたんだ。あの様子から見て、多分あれは――…」
「ええ、そうね。私もそう思うわ」

ボウヤの言わんとしてることを察知して同意すれば、大きな青い瞳がきょとんと瞬いた。

「…もしかしてAさん、それを確認する為に?」

その問いかけに、僅かに唇を吊り上げる。


それが答えだった。


***


「どうぞ、お入りください」
「え、いや、」
「紅茶、すぐに用意するわね!」
「いえ、そうではなく…」

ドアの向こうで押し問答する声が聞こえる。それにくすりと笑って、テーブルに置かれた紅茶を一口すする。

「何故貴方がたが…!」
「何を驚く?工藤新一を探るなら、彼らが出てくることは分かっていたはずだろう」
「うるさいぞ赤井秀一!」

怒声と共に、がちゃりとドアが開いた。

入ってきたのは、秀一を先頭に、優作さんと有希子さん。

――そして。


「待ってたわ、零。…いいえ、今はバーボンと呼ぶべきかしら」


黒い帽子の隙間から、その目が僅かに見開かれた。



「さぁ―――情報共有といきましょう」


.

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胡蝶(プロフ) - 来来(きままに更新)さん» コメントありがとうございます!一気読み頂いたうえにそんなお褒めの言葉まで…!嬉しいです…噛みしめますね…。さて、二幕も終盤でございます。遅筆ですが、どうぞ最後までお付き合い下さいませ! (9月6日 0時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
来来(きままに更新)(プロフ) - ついつい一気読みしました。文章力もそうですがギムレットの感情、安室との絡み全てが好きです!尊敬します! (9月5日 12時) (レス) @page45 id: b6c1688bfb (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 胡蝶さん» まさかお返事をいただけるなんて(;ω;)とっても嬉しいです!!もちろんお楽しみにしながら待ってます!!!♡ (7月25日 20時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - ゆいさん» コメントありがとうございます!そして、嬉しいお言葉をありがとうございます!タイムセールもお楽しみ頂けたようで何よりです笑 のんびり更新ですが、二幕も終盤に差し掛かりました。どうぞ最後までお付き合いいただければと思います。 (7月24日 23時) (レス) @page19 id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 卵のくだりがすごく面白かったです笑 (7月24日 22時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:胡蝶 | 作成日時:2023年7月10日 8時

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