Case.279 ページ48
「すまない、勘違いをさせてしまったみたいだな。…いや、あながち間違いでもないのだが」
「ええと…それはどういう…?」
困惑する僕に、彼は柔らかく微笑んだ。
「挨拶もなくすまなかったね。私はジェイムズ・ブラック。九条君…いや、A君との関係は、保護者代わり…といったところかな」
「貴方が…!!」
告げられたその名は、裏理事官から聞いている。
ジェイムズ・ブラック―――その人物こそ。
この日本に潜入する、FBI捜査官達の司令塔だ。
「自分は公安の降谷零と申します!この度は――!」
立ち上がり、敬礼とともに挨拶をすると、それは片手で制された。そして、ゆっくりと首を横に振る。
「今の私は、“A君の保護者代わり”だ。それに相応するもので頼むよ」
「……!」
彼の言わんとするところを察して、口を噤んだ。敬礼していた右手を下ろし、小さく肩をすくめる。
「…確かに、今この場に肩書は必要ありませんね」
「改めまして、Aさんとお付き合いさせていただいています。降谷零と申します」
そう名乗ると、ジェイムズさんは満足そうにこりと微笑んだ。
「君のことはA君から聞いているよ。とても頼りになる人物だとね」
「彼女がそんなことを…?」
まさかAが上司に僕の話をしているなんて思わなかったから、素で驚いた。
…いや、ただの上司ではないと聞かされたばかりだったな。
「…あの、“保護者代わり”について伺っても?」
「何、そこに大した含みはないよ。身寄りのない彼女の世話をよく焼いていたので、そう名乗っているにすぎない。だが…君のその様子だと、この子はまだ、何も話せていないのか」
ジェイムズさんはそっと目を伏せて、Aへ視線を向けた。
「…すまない。この子は存外臆病なところがあってね。きっとまだ、覚悟ができていないのだろう」
そう言う彼の顔は悲しげで、どこか苦しそうで。
「ええ。…存じています」
後悔をしているように、見えた。
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胡蝶(プロフ) - 来来(きままに更新)さん» コメントありがとうございます!一気読み頂いたうえにそんなお褒めの言葉まで…!嬉しいです…噛みしめますね…。さて、二幕も終盤でございます。遅筆ですが、どうぞ最後までお付き合い下さいませ! (9月6日 0時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
来来(きままに更新)(プロフ) - ついつい一気読みしました。文章力もそうですがギムレットの感情、安室との絡み全てが好きです!尊敬します! (9月5日 12時) (レス) @page45 id: b6c1688bfb (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 胡蝶さん» まさかお返事をいただけるなんて(;ω;)とっても嬉しいです!!もちろんお楽しみにしながら待ってます!!!♡ (7月25日 20時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - ゆいさん» コメントありがとうございます!そして、嬉しいお言葉をありがとうございます!タイムセールもお楽しみ頂けたようで何よりです笑 のんびり更新ですが、二幕も終盤に差し掛かりました。どうぞ最後までお付き合いいただければと思います。 (7月24日 23時) (レス) @page19 id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 卵のくだりがすごく面白かったです笑 (7月24日 22時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2023年7月10日 8時