微睡みに落ちる７【降谷零/安室透】

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溶けきった氷水を取り替えにキッチンへ向かうと、タイミング良く玄関の閉まる音が聞こえてきた。

「ただいま…あれ、バーボン！」
「おかえりなさい、スコッチ。…って、ライも居たんですか」

顔を覗かせたスコッチの後ろに、嫌いな顔まで見つけてしまう。

「買い物終わって帰ろうとしたら、偶然会ってさ。一緒に戻ってきたんだ」

ガサガサとビニール袋を2つ掲げるのを見るに、買いたいものは買えたらしい。その横を、ライがすたすたと通り過ぎていく。

「ライ、貴方薬は―――」
「ん」

まさか部屋へ行くのかと危惧して声をかけると、ライは手に持った紙袋をぐいっと押し付けてきた。

「それが薬だ。後はお前達に任せる」
「は？任せるって…」
「俺はいない方がいいだろう」

言うだけ言って、ライはそのまま2階へ上がってしまった。

「…アイツ、一切手伝わないつもりか」
「バーボン、剥がれてる剥がれてる」

それは敬語のことか、それともバーボンの“顔”のことか。
一度片手で顔を覆い、深く息を吐き出す。

「…まぁいいです。とりあえず先に薬を飲ませないと…」
「あ、それなんだけど…ギムレット、特に食べたいもののリクエストなかったんだよね？」
「ええ。あの後すぐに寝てしまって、そのままでしたから」

そう言うと、スコッチはそっか…と呟いて思案げに口元に手を当てた。

「よし、分かった。それじゃあ…バーボンちょっと手伝って？」

「…はい？」


にこりと笑うヒロを前に、拒否権は存在しなかった。


＊＊＊


ほかほかと温かい湯気が立ちのぼる。
それを、ギムレットがぱくりと口に運んだ。

「どう？食べれそう？」

心配そうなスコッチに、ギムレットはもぐもぐと咀嚼しながらこくんと頷く。それに、スコッチと2人でホッとため息をついた。

ギムレットが食べているのは、“チキンスープ”と呼ばれるもの。アメリカでは、風邪の時によく食べられる料理だ。

「じゃあオレ、キッチン片付けてくるよ。ギムレット、ここにバーボン置いてくから、何かあったら伝えて」
「は？」

なんだ置いてくって。

「ん、分かった」
「え？」

僕は分かってないが？
1人であたふたしてると、去り際のスコッチがとてもいい笑顔を送ってきた。覚えてろよヒロ。

心の中で恨み言を呟き、そっとギムレットに視線を向ける。静かにもくもくと食べる様子を見つめて、なんともいえない気持ちが湧き上がってきた。

というのも、実はこのチキンスープ、僕も作るのを手伝っている。

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