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「ギ、ギムレット!?」

驚いたのは僕だ。
さっきまで動く気力なんて無かったはずなのに、上体を半分起こしている。

「何してるんですか!早く横に―――」


「薬はっ、ライがもらってくる!だ…からっ、いらない…っ!」


その瞬間、僕はびしりと固まった。
薬を貰ってくる?…ライが?

突然動かなくなった僕を見て、スコッチがさっと顔を青くする。

「な…なんだそういうことかぁ!ごめんな、勘違いして!じゃあオレは、氷枕とか食材とかその他諸々買ってくるから!バーボン、あとよろしくな!」
「…え、ま、スコッチ!?」

早口でまくし立てながら、スコッチはギムレットを寝かせ、タオルを氷水で絞り直し、掛け布団や氷嚢の位置を調整して、光の速さで部屋を出て行った。

「………」

伸ばしかけて行き場をなくした手が空中を彷徨う。
見捨てられた…。

「…ねぇ」
「っは、い」

声をかけられるとは思わず、つい返事が上ずった。それに気づいていないのか気に留めていないのか、ギムレットは表情を変えずにじっと僕を見つめてくる。

「バーボンは、ここに居るの…?」
「あ…ええと…」

そろりと視線を動かす。スコッチがよろしくなんて言い残していったから気になるのだろう。

「…まぁ、そう…ですね」

タオルも氷嚢も定期的に変えないといけないし、急変してもすぐ気づけるようにしておかないと心配なくらいには熱が高いのだ。
もちろん、個人的にも心配だし、側に居たいというのも本音だが。
逆に気が休まらないと言われたらどうしようと、そっとギムレットの顔色を窺う。

―――と。


「…そ。なら、いい」


ふわり、と。

それはまるで、安心したかのように緩んだ顔。


「……!」

思いがけない光景に息を詰めていると、ギムレットは気が抜けたのか、そのまますんなりと眠りに落ちていった。

「………」

彼女がすぅすぅと寝息をたてるかたわら、僕は額に当てた手でぐしゃりと前髪を掻き上げる。


「…だから、なんでそんな顔で笑うんだ…」


ぽつりと呟いた言葉は、誰にも聞かれることなく消えていった。


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胡蝶(プロフ) - 来来(きままに更新)さん» コメントありがとうございます!一気読み頂いたうえにそんなお褒めの言葉まで…!嬉しいです…噛みしめますね…。さて、二幕も終盤でございます。遅筆ですが、どうぞ最後までお付き合い下さいませ! (9月6日 0時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
来来(きままに更新)(プロフ) - ついつい一気読みしました。文章力もそうですがギムレットの感情、安室との絡み全てが好きです!尊敬します! (9月5日 12時) (レス) @page45 id: b6c1688bfb (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 胡蝶さん» まさかお返事をいただけるなんて(;ω;)とっても嬉しいです!!もちろんお楽しみにしながら待ってます!!!♡ (7月25日 20時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - ゆいさん» コメントありがとうございます!そして、嬉しいお言葉をありがとうございます!タイムセールもお楽しみ頂けたようで何よりです笑 のんびり更新ですが、二幕も終盤に差し掛かりました。どうぞ最後までお付き合いいただければと思います。 (7月24日 23時) (レス) @page19 id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 卵のくだりがすごく面白かったです笑 (7月24日 22時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:胡蝶 | 作成日時:2023年7月10日 8時

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