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「…何してるんだ僕は…」
ゲストルームの自分のベッドに座り、僕は両手で顔を覆っていた。
シャワーを浴びて冷静になった頭で思い返せば、さっきまでの自分がバーボンとして如何にギリギリだったかがよく分かる。スコッチがいてくれて良かった。本当に。
「…ヒロが戻ってきたら、礼を言わないとな…」
ため息と共に仰向けに寝転がって、ぽつりと呟く。少し前にバスルームへ向かったから、そろそろ戻ってくるはず―――
「ゼ―――バーボンっ!!」
「うわっ!?」
突然、スコッチがノックも無しに飛び込んできた。
というか今、“ゼロ”って言いかけなかったか!?
「…そんなに慌ててどうしたんですか、スコッチ。何かありました?」
理由は分からないが、こんなに動揺するスコッチも珍しい。宥めるつもりで、わざと落ち着いた口調で答える。
しかし。
「ギムレットが倒れた!!」
「っ!?」
その一言で、そんな余裕は一気に吹っ飛んだ。
「酷い熱で…とにかく手伝って!」
そう言って、スコッチはすぐに踵を返す。
一瞬遅れて後を追い、リビングへと駆け込んだところで目を瞠った。
「ギムレット…!?」
上半身をソファの縁にだらりともたれ掛け、床の上に座り込んでいる。呼吸は荒く、肩を大きく上下させていた。
「ひとまず部屋に移動させよう。バーボンはギムレットを運んでくれ。オレは冷やすもの準備してくる!」
「分かりました!」
言うが早いか、ギムレットの背中と膝裏を支えて抱え上げる。その身体の熱さに驚くのも束の間、急いで彼女の私室へと運び込んだ。
なんとかベッドに寝かせたところで、スコッチが大量の氷を抱えてやって来た。
「やばい、この家なんにもなかった。今はこれで冷やそう。バーボンは即席で氷嚢作って!」
「はい!」
渡された袋に氷を入れる傍ら、スコッチは氷水を張った桶にタオルを浸している。
「何もないって、風邪薬とかもなかったんですか?」
「ああ…湿布とか傷薬とかはあったんだけど、そういうのは何も…。だからオレ、この後色々買ってこようと思う。近くの薬局ならまだ空いてるはずだから」
「分かりました。そちらはお任せします。…それにしても、いつの間にこんな熱が…」
僕達が帰ってきた時はまるで普通だった。辛そうな様子は一切無かったが、本当は我慢していたんだろう。
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胡蝶(プロフ) - 来来(きままに更新)さん» コメントありがとうございます!一気読み頂いたうえにそんなお褒めの言葉まで…!嬉しいです…噛みしめますね…。さて、二幕も終盤でございます。遅筆ですが、どうぞ最後までお付き合い下さいませ! (9月6日 0時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
来来(きままに更新)(プロフ) - ついつい一気読みしました。文章力もそうですがギムレットの感情、安室との絡み全てが好きです!尊敬します! (9月5日 12時) (レス) @page45 id: b6c1688bfb (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 胡蝶さん» まさかお返事をいただけるなんて(;ω;)とっても嬉しいです!!もちろんお楽しみにしながら待ってます!!!♡ (7月25日 20時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - ゆいさん» コメントありがとうございます!そして、嬉しいお言葉をありがとうございます!タイムセールもお楽しみ頂けたようで何よりです笑 のんびり更新ですが、二幕も終盤に差し掛かりました。どうぞ最後までお付き合いいただければと思います。 (7月24日 23時) (レス) @page19 id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 卵のくだりがすごく面白かったです笑 (7月24日 22時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2023年7月10日 8時