Case.Gimlet ページ40
今日の任務を終えて、3人揃ってセーフハウスへと帰宅したのは、ちょうど20時をまわった頃。
リビングに入ると、ノートパソコンの前でギムレットがブランケットにくるまっていた。
「ただいま、ギムレット」
「戻りました」
スコッチと僕が声をかけると、ちらりと視線がこちらを向く。
「…おかえり」
いつも通りの一言が返ってきて、薄いグレーは再びパソコンに戻った。まだやることがあるんだろう。その横を、3人で静かに通り抜ける。
―――否、通り抜けようとした。
「……なんだ」
ライが低い声で問いかける。それもそのはず、ライの上着の袖をギムレットが掴んでいた。
「…ライは残って」
「は?」
声を出したのは僕だった。
当のライはぴくりと眉を跳ね上げただけで、スコッチはまるで修羅場を目撃した通行人のような顔をしている。
何をしてるんだ僕は。今のは反応したらダメなやつだぞ分かるだろ。
「え、えーっと…珍しいな!ギムレットがライを呼び止めるなんて!」
僕が固まっている事に気がついたのか、スコッチがわざと明るい声で場を和ませにかかった。
さすがヒロ。
僕も気まずさを誤魔化すために、コホンと咳払いをひとつする。
「…その。追加の任務であれば、僕達もまだ動けますが?」
「ただの個人的な用事。2人はいいから、さっさとシャワーでも浴びてきて」
待ってくれもっと聞き捨てならないんだが?
ライは相変わらずの仏頂面で、スコッチは深呼吸でもしたように細長い息を吐きだしていた。
「…なんで俺に」
ライがいかにも面倒そうな声で言い放つ。
なんだその態度。
すると、ギムレットは袖を離し、なんとライの手に触れた。指先をきゅっと握り、じっとライを見つめている。
対するライは、それを受けて眉間に深いシワを刻んでいた。嫌なら代われよ。
まずいキレそう。このままじゃバーボンのキャラを保てない。
くそ…ここは引くしかないか…!
表情筋を引きつらせながらも、なんとか笑顔を貼り付けた。
「……分かりました。それなら僕達はお先に失礼するとしましょう」
「そ、そうだなバーボン!先に風呂入っていいぞ!」
「そうですか。では、お言葉に甘えて」
スコッチに肩を組まれて、表向き和やかに――その実全力で背中を押されながらその場を後にする。そして死角に入った瞬間、スコッチはピタリと足を止めて僕の肩に両手を乗せた。
「…とりあえず、水浴びて冷静になってきて」
「…はい」
真正面から、とても真剣な目で諭された。
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胡蝶(プロフ) - 来来(きままに更新)さん» コメントありがとうございます!一気読み頂いたうえにそんなお褒めの言葉まで…!嬉しいです…噛みしめますね…。さて、二幕も終盤でございます。遅筆ですが、どうぞ最後までお付き合い下さいませ! (9月6日 0時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
来来(きままに更新)(プロフ) - ついつい一気読みしました。文章力もそうですがギムレットの感情、安室との絡み全てが好きです!尊敬します! (9月5日 12時) (レス) @page45 id: b6c1688bfb (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 胡蝶さん» まさかお返事をいただけるなんて(;ω;)とっても嬉しいです!!もちろんお楽しみにしながら待ってます!!!♡ (7月25日 20時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - ゆいさん» コメントありがとうございます!そして、嬉しいお言葉をありがとうございます!タイムセールもお楽しみ頂けたようで何よりです笑 のんびり更新ですが、二幕も終盤に差し掛かりました。どうぞ最後までお付き合いいただければと思います。 (7月24日 23時) (レス) @page19 id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 卵のくだりがすごく面白かったです笑 (7月24日 22時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2023年7月10日 8時