Case.271 ページ34
入口の向こうからウォッカがバタバタと駆け込んでくるのが見えて、伸ばしていた手をポケットに押し込む。
「すまねぇ、俺が取り逃がしちまったばかりに…って、こいつら…もうバラしたんですかい？」
床に転がる死体を見て、ウォッカが意外そうな顔をしている。
「てっきり情報の流し先を吐かせるのかと…」
「………」
確かに、はじめはそのつもりだった。こんな雑魚から組織の情報を盗めると思っているバカ面を、この目で拝んでやろうと思っていた。
だが。
――俺達はテメェが探してる、あの―――
「…ネズミの鳴き声が、思いの外耳に障ったんでな…」
あの口でギムレットの名を紡ごうとするのが不愉快だった。
引き金を引いた理由は、ただそれだけ。
「…ウォッカ。ネズミ共を海へ棄てろ」
「了解！」
威勢良く返事をしたウォッカが、男を2人まとめて引きずっていく。その時、内ポケットの中でスマホが震えた。
…ベルモット？
「…なんだ」
《ジン、貴方…さっきのデマは聞いた？》
「………」
思いがけず無言を返したのは、少々の驚きによるものだった。
いつもはどうでもいい前置きから入るくせに、開口一番、しかも珍しく単刀直入に質問を投げかけてくるとは。
俺の無言に焦れたのか、ベルモットの口調に僅かな苛立ちが込もった。
《子猫を見つけたなんて作り話、まさか信じてないわよね？あれはどう考えても、貴方の注意を逸らす為に例の2人組が流したブラフで――》
「ハッ…あの逃げ回ってたネズミなら、ついさっきドブから引きずり出してやったところだ。今は2人仲良く、海で素潜りしてる頃だろうよ」
そう言ってやったら、ベルモットは勢いを削がれたらしい。それならいいわ、と幾分か落ち着いた声が返ってきた。
ちらりと、目の前のコンテナに視線を向ける。
この様子から察するに、ベルモットは気づいているのだろう。そうでなければ、今このタイミングで電話などかけてくるはずがない。
まぁ、別段驚きはしないが。
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胡蝶(プロフ) - 来来（きままに更新）さん» コメントありがとうございます！一気読み頂いたうえにそんなお褒めの言葉まで…！嬉しいです…噛みしめますね…。さて、二幕も終盤でございます。遅筆ですが、どうぞ最後までお付き合い下さいませ！ (9月6日 0時) (
レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
来来（きままに更新）(プロフ) - ついつい一気読みしました。文章力もそうですがギムレットの感情、安室との絡み全てが好きです！尊敬します！ (9月5日 12時) (レス) @page45 id: b6c1688bfb (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 胡蝶さん» まさかお返事をいただけるなんて(；ω；)とっても嬉しいです！！もちろんお楽しみにしながら待ってます！！！♡ (7月25日 20時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - ゆいさん» コメントありがとうございます！そして、嬉しいお言葉をありがとうございます！タイムセールもお楽しみ頂けたようで何よりです笑 のんびり更新ですが、二幕も終盤に差し掛かりました。どうぞ最後までお付き合いいただければと思います。 (7月24日 23時) (レス) @page19 id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 卵のくだりがすごく面白かったです笑 (7月24日 22時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：胡蝶 | 作成日時：2023年7月10日 8時
