Case.267 ページ30
「……!」
もしかして、アイツらが戻ってきた…?
そうだとしたら、かなりまずい。相手が1人ならまだしも、今の状態で2人も相手取るのは無謀だ。
…仕方ない。
扉の開いたコンテナの中に体を滑り込ませて、じっと息を潜める。
痕跡を消せないのが気になるけど、扉を蹴り開ければどっちか片方は伸せるはず。それでなんとかしよう。
「―――…!」
「――、――…―――!」
…声が近くなってきたな。
雨の所為で、まだ何を言ってるかは聞こえない。でも、男の声なのは判別できた。息を詰めて聞き耳を立てる。
「―――で!どうし―――がここに――!!」
「発信――だ!やられ―――!!」
「………」
声が2つ、あの男達で間違いない。
バシャバシャと走る水音も聞こえるから、入口のすぐ近くまで来てるんだろう。
声の感じからして、誰かに追われてる…?
相手は警察かと思ったけど、それにしてはパトカーのサイレンも聞こえないのはおかしい。
じゃあ一体―――誰に?
――ざわり。
突如、胸の奥がさざめき立つ。
なんだろう…この嫌な感じ…。
胸の上でぎゅっと手を握り込む。
やだな…熱の所為で気弱になってるのかも。
寒気は治まらないし、頭痛も酷い。立ってるだけでも平衡感覚を失くしそうで、壁にもたれてゆっくりと深呼吸した。
「………はぁ」
ひと心地ついて、ぼんやりと瞬きをする。
追ってくる相手が、警察ではないとして。どうしてアイツらは逃げてるんだろう。
あの剣幕は尋常じゃない。
あれはまるで―――そう。
目の前に、死が迫っているかのような―――。
刹那、鋭い発砲音が雨音を切り裂いた。
「ッ!?」
男の1人が絶叫するのが聞こえて、反射的に息を詰める。倉庫の中にバタバタと足音が駆け込んで来た。
「チクショウ!撃ってきやがった!!」
「ああ兄貴っ!いてェ!いてェよ……!」
「分かってる黙ってろ!一度あの女を盾にして、ハッタリでもかましてや――…!」
そこで一瞬、声が途切れた。私がいないことに気がついたんだろう。男が息を呑んで驚愕するのが、コンテナの中まで聞こえてくる。
「逃げた、だと…?あの女、ふざけやがっ―――」
その先は、再び響いた発砲音に掻き消された。
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胡蝶(プロフ) - 来来(きままに更新)さん» コメントありがとうございます!一気読み頂いたうえにそんなお褒めの言葉まで…!嬉しいです…噛みしめますね…。さて、二幕も終盤でございます。遅筆ですが、どうぞ最後までお付き合い下さいませ! (9月6日 0時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
来来(きままに更新)(プロフ) - ついつい一気読みしました。文章力もそうですがギムレットの感情、安室との絡み全てが好きです!尊敬します! (9月5日 12時) (レス) @page45 id: b6c1688bfb (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 胡蝶さん» まさかお返事をいただけるなんて(;ω;)とっても嬉しいです!!もちろんお楽しみにしながら待ってます!!!♡ (7月25日 20時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - ゆいさん» コメントありがとうございます!そして、嬉しいお言葉をありがとうございます!タイムセールもお楽しみ頂けたようで何よりです笑 のんびり更新ですが、二幕も終盤に差し掛かりました。どうぞ最後までお付き合いいただければと思います。 (7月24日 23時) (レス) @page19 id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 卵のくだりがすごく面白かったです笑 (7月24日 22時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2023年7月10日 8時