Case.265 ページ28
「……!」
「なぁに、バーボン。どうかしたの?」
ハッと後ろを振り向いた僕を、ベルモットが訝しげに見つめてくる。
「あ…いえ…」
…なんだ、今の。
「…その、焦燥感、といいますか…」
先程から感じているこの胸騒ぎが、急げ急げと急かしてくるような、そんな感覚。
一体何を急げというのか。困惑に視線を彷徨わせたところで、スマホの通知ライトが点滅していることに気がついた。
風見…?
このタイミングで連絡が来るということは、逃亡中の構成員の行方が分かったのだろうか。
「…失礼」
本来なら、ベルモットの目の前で見るべきじゃない。それは分かっているが、何かに見ろと囁かれた気がした。
「何よ、なんとも無いならもう行くわよ?」
煩わしそうな声を聞き流し、はやる気持ちを抑えながらメールを開く。
その瞬間、全身から一気に血の気が引いた。
「―――ベルモット!」
気づいた時には叫んでいた。
「今すぐジンに連絡してください!早く!」
「ちょっと何?貴方らしくない…」
血相を変えて叫ぶ僕に、ベルモットが目を丸くして驚いている。
それはそうだろう。今の僕に、いつも冷静なバーボンの仮面を被っていられるほどの余裕はない。
だって。
「…リークされたあの情報が、ただのデマではない可能性がある…と言ったら?」
「…なんですって?」
ベルモットの声が、戦慄にわななく。
僕だって信じられない。だが、―――これは。
《対象が殺害したと思われる遺体の近くで、九条捜査官のスマホを発見しました》
《私の独断でFBIと合流し、九条捜査官が持っているとされる発信器を確認したところ―――》
《現在、東京湾近くの廃倉庫にいるそうです》
「捕まったのは本当に、ギムレットかもしれません」
自分の発した声が、固く強張った。
.
297人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
胡蝶(プロフ) - 来来(きままに更新)さん» コメントありがとうございます!一気読み頂いたうえにそんなお褒めの言葉まで…!嬉しいです…噛みしめますね…。さて、二幕も終盤でございます。遅筆ですが、どうぞ最後までお付き合い下さいませ! (9月6日 0時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
来来(きままに更新)(プロフ) - ついつい一気読みしました。文章力もそうですがギムレットの感情、安室との絡み全てが好きです!尊敬します! (9月5日 12時) (レス) @page45 id: b6c1688bfb (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 胡蝶さん» まさかお返事をいただけるなんて(;ω;)とっても嬉しいです!!もちろんお楽しみにしながら待ってます!!!♡ (7月25日 20時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - ゆいさん» コメントありがとうございます!そして、嬉しいお言葉をありがとうございます!タイムセールもお楽しみ頂けたようで何よりです笑 のんびり更新ですが、二幕も終盤に差し掛かりました。どうぞ最後までお付き合いいただければと思います。 (7月24日 23時) (レス) @page19 id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 卵のくだりがすごく面白かったです笑 (7月24日 22時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:胡蝶 | 作成日時:2023年7月10日 8時