Case.261 ページ24
《え?A、まだ帰ってないの?》
ジョディからの電話に出てみれば、話の内容はAの体調についてだった。昨日から喉の調子がおかしいと言っていたが、今日会った時にくしゃみをしていたのが気になったらしい。
ちゃんと休んでいるかの確認をしたかったそうだが、まだ帰ってきていないと伝えたところ、ジョディが驚いたのが冒頭だ。
「どこかで雨宿りでもしているんだと思っていたが…」
少し前から、大粒の雨がひっきりなしに窓を叩いている。雷も聞こえてきているし、しばらく様子見をしているんだろうとあまり気に留めていなかった。
《そうかもしれないけど…体調悪そうだったし、帰ったらすぐに寝るって言ってたのよ。寝るより優先して雨宿りなんてするかしら…》
なるほど、そういうことだったのか。
確かに、寝穢さに定評のあるAのことだ。ここのところ忙しくしていたから、いつもより寝る時間も削っていたはず。そう考えると雨宿りの線は薄い。
何事もなければ30分で帰ってくる距離を、既に1時間以上…何かあったか?
普段なら大丈夫だろうが、今は睡眠不足に風邪気味が上乗せされている。少々心配だ。
「探そう。ジョディはキャメルと共に、Aと会った場所の周辺を見てきてくれ。何か見つかるかもしれん。それと、ジェイムズにも報告を頼む」
《了解。…そういえばあの子、のど飴代わりに例のキャンディを舐めてたわ。シュウ、Aのパソコンは触れる?》
「あのキャンディか…。分かった、やってみよう」
そこで通話を切り、Aの部屋に向かう。幸いにもパソコンの電源はついたままだった。
キャンディを舐めたということは、DNA鑑定がされているはずだ。結果はAの持つデータベースと照合されるから、その通知が何処かに来ているはず。
「これか…?」
それらしきものを見つけて開いてみるとビンゴだった。現在地が顔写真付きで表示されている。盗聴器の音声を聞く方法がいまいち分からないが、位置情報さえ拾えればこちらのものだ。
だが。
「何故こんなところに…」
発信器が指し示すのは、東京湾近くの廃倉庫。
何かを発見したのだろうか。しかし、Aが連絡もなしに単独行動するとは思えない。
…嫌な予感がする。
嵐の前の静けさのような、凪いだ水面にさざ波が広がるような――そんな感覚。
…まさか。
直後、スマホが見計らったようにバイブした。
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胡蝶(プロフ) - 来来(きままに更新)さん» コメントありがとうございます!一気読み頂いたうえにそんなお褒めの言葉まで…!嬉しいです…噛みしめますね…。さて、二幕も終盤でございます。遅筆ですが、どうぞ最後までお付き合い下さいませ! (9月6日 0時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
来来(きままに更新)(プロフ) - ついつい一気読みしました。文章力もそうですがギムレットの感情、安室との絡み全てが好きです!尊敬します! (9月5日 12時) (レス) @page45 id: b6c1688bfb (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 胡蝶さん» まさかお返事をいただけるなんて(;ω;)とっても嬉しいです!!もちろんお楽しみにしながら待ってます!!!♡ (7月25日 20時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - ゆいさん» コメントありがとうございます!そして、嬉しいお言葉をありがとうございます!タイムセールもお楽しみ頂けたようで何よりです笑 のんびり更新ですが、二幕も終盤に差し掛かりました。どうぞ最後までお付き合いいただければと思います。 (7月24日 23時) (レス) @page19 id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 卵のくだりがすごく面白かったです笑 (7月24日 22時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2023年7月10日 8時