Case.258 ページ21
※ご注意
2話続けて、吐血・暴力表現があります。
＊＊＊＊
あー…ちょっと喉痛いかも。
キャンディの棒をつまんで、口の中でころりと回す。
不意に、ポツリと雨が肌を叩いた。
「うわ、降ってきた」
ため息を我慢して、持っていたビニール傘を開く。
…さっさと薬買って帰ろ。
確かここの路地を抜けた方が近道だったはずだ。薬局までのマップを思い出しながら、近くの角を曲がる。
その瞬間、視界の端から女性が倒れ込んできた。
「わ…？」
反射的に受け止める。
ひゅう、と嫌な呼吸音が聞こえた。――直後。
―――ごぽり
「……え…？」
服が、雨ではない何かでべっとりと濡れる。
ぬるりと手が滑り、支えていた彼女の体が、赤く染まった地面に転がった。
徐々に勢いを増す雨が、手を染めた鮮血をまだらに洗い流していく。
足元ではじわじわと赤色が濃さを増し、私の靴を濡らしていて。
バチンと、意識が覚醒した。
「―――ッ！！」
すぐさまその場で膝を付き、倒れた女性の脈を取る。
…ダメか。
この出血量だ。脈があっても、多分助からなかっただろう。
右腹部と右胸下に刺傷…多分、胸下は肺に届いてるわね。
息が漏れるような独特の呼吸音をしていた。きっと、声も出せなかったに違いない。
その時、バシャバシャと近づいてくる足音が聞こえた。
「クソが！手間かけさせやがって…って、…あ゙？」
「…アンタか」
現れたのは、顔に刺青のある、30代半ばの男だった。片手にナイフを持ったその男を睨みつけて、ゆっくりと立ち上がる。
「あーあ、また一般人かよ…。こんなとこ見ちまうなんて、ついてねェなァ？」
「…そうね。こんな言い逃れできない状況で見つかるなんて、アンタ本当についてないわ」
舐めていたキャンディを包み紙に戻してポケットに突っ込み、傘を閉じてボタンを留めた。
「…おい、今の状況分かってんのか？テメェは今からオレに殺されんだよ」
「………」
男が、ナイフをチラつかせて脅してくる。
もちろん、そんなもの脅しになんかならないけど。
「けど、もったいねぇなぁ。良い身体してやがるし、よく見りゃツラも最高じゃねぇか！殺す前にたっぷり楽しませてもら――ぅぐッ！？」
「………」
言い終わる前に、私の回し蹴りが男の首を捉えた。男は潰れたようなうめき声を残して吹っ飛び、壁に当たってずるりと座り込む。
「…ほら、ついてない」
ポツリと呟き、意識を飛ばした男の右手からナイフを取り上げると、もう一度傘を開いた。
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胡蝶(プロフ) - 来来（きままに更新）さん» コメントありがとうございます！一気読み頂いたうえにそんなお褒めの言葉まで…！嬉しいです…噛みしめますね…。さて、二幕も終盤でございます。遅筆ですが、どうぞ最後までお付き合い下さいませ！ (9月6日 0時) (
レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
来来（きままに更新）(プロフ) - ついつい一気読みしました。文章力もそうですがギムレットの感情、安室との絡み全てが好きです！尊敬します！ (9月5日 12時) (レス) @page45 id: b6c1688bfb (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 胡蝶さん» まさかお返事をいただけるなんて(；ω；)とっても嬉しいです！！もちろんお楽しみにしながら待ってます！！！♡ (7月25日 20時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - ゆいさん» コメントありがとうございます！そして、嬉しいお言葉をありがとうございます！タイムセールもお楽しみ頂けたようで何よりです笑 のんびり更新ですが、二幕も終盤に差し掛かりました。どうぞ最後までお付き合いいただければと思います。 (7月24日 23時) (レス) @page19 id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 卵のくだりがすごく面白かったです笑 (7月24日 22時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：胡蝶 | 作成日時：2023年7月10日 8時
