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「…さて、オレはこの後買い物行ってくるけど、バーボンは動いちゃダメだからな」
「え?」
何故か待機命令が出た。これから彼女を部屋に運ぶつもりだったのに。ていうか、やっぱり行くのかタイムセール。
「どうして…」
「もしかしたら、また起きちゃうかもしれないだろ。バーボンの任務は、ここでギムレットの抱きまくらになること」
「だ、抱きまくら!?」
何言ってるんだヒロ!?
「…んん…ぅー…」
驚いた拍子に体が揺れてしまい、寄りかかっていたギムレットが不機嫌そうに唸った。そしてもぞもぞと動いたかと思うと、伸びてきた手が僕の服の袖をギュッと握る。
「へっ?」
片腕を完全に抱え込まれ、ぴったりとくっつかれたこの状況に、つい間抜けな声が飛び出した。固まりかけた身体を無理やり動かし、助けを求めるようにスコッチを見上げる。
ツリ目がにんまりと弧を描いた。
「…な?」
“な?”、じゃない。あとなんでそんなに楽しそうなんだ。
スコッチは塊から引っ張り出したブランケットをギムレットに掛けて、くるりと踵を返す。
「じゃ、そういうことで。あ、カップはそこに置いたままでいいからな」
「ちょ、スコッチ…!」
爽やかに笑って玄関へ消えていく背中に、必死に手を伸ばす。雨の様子を見て帰ってきてくれないかと願ったが、見計らったかのように雨足が弱まり始めたので望み薄だろう。
「………嘘だろ」
無情にもぽつんと取り残されて、行き場のなくなった手をだらりと下ろした。
反対の手は相変わらずギムレットに抱え込まれている。
…どうしよう。
これだと彼女の体温がリアルに感じ取れてしまうし、物理的に近すぎて寝顔もよく見れてしまう。
髪からシャンプーの香りも漂ってくるし、極めつけは抱え込まれた腕に当たる柔らかい感触。
「――――…」
ふーっと長い息を吐き出して、天井を仰いだ。
…素数を数えよう。
ちなみに30分後。
帰ってきたスコッチに説教でもしようと思っていたら、心底嬉しそうな顔で卵を2パック見せられた。
許した。
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胡蝶(プロフ) - 来来(きままに更新)さん» コメントありがとうございます!一気読み頂いたうえにそんなお褒めの言葉まで…!嬉しいです…噛みしめますね…。さて、二幕も終盤でございます。遅筆ですが、どうぞ最後までお付き合い下さいませ! (9月6日 0時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
来来(きままに更新)(プロフ) - ついつい一気読みしました。文章力もそうですがギムレットの感情、安室との絡み全てが好きです!尊敬します! (9月5日 12時) (レス) @page45 id: b6c1688bfb (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 胡蝶さん» まさかお返事をいただけるなんて(;ω;)とっても嬉しいです!!もちろんお楽しみにしながら待ってます!!!♡ (7月25日 20時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - ゆいさん» コメントありがとうございます!そして、嬉しいお言葉をありがとうございます!タイムセールもお楽しみ頂けたようで何よりです笑 のんびり更新ですが、二幕も終盤に差し掛かりました。どうぞ最後までお付き合いいただければと思います。 (7月24日 23時) (レス) @page19 id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 卵のくだりがすごく面白かったです笑 (7月24日 22時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2023年7月10日 8時