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窓の外が瞬くように光る。一拍おいて、あたりに轟音が鳴り響いた。
「うわっ、」
「っ!」
リビングルームで作業をしていた僕とスコッチは、同時にビクッと肩を揺らし、外の様子を窺う。
「今、落ちた?」
「ええ、だいぶ近いですね」
少し前から降っていた雨が、みるみる大粒になって窓を叩き始めた。ゴロゴロと余韻のような雷鳴が響いたかと思うと、再び光が瞬いてバリバリと引き裂くような落雷が空気を揺らす。
「うわ、結構酷いな…。これ終わったら買い物行こうと思ってたのに」
困ったように眉を下げるスコッチの前には、メンテナンスの為に分解したライフルが広げられていた。
「夕立でしょう。1時間程度でおさまるはずですし、少し予定をズラしては?」
「あー……仕方ないかぁ…」
スコッチが残念そうに肩を落とす。
タイムセール終わっちゃうな、なんて呟いてるのが聞こえて、僕は全力でポーカーフェイスを維持した。スコッチとして言ってるのかヒロとして言ってるのか分からないが、この組織の人間からタイムセールという言葉は聞きたくなかった。笑いそう。
「だって卵が2パックで250円だったんだよ?安くない?」
「勘弁してください。僕の腹筋殺す気ですか」
死にそう。
タイムセールを諦めきれないのか、スコッチはチラチラと窓の外に視線を送っている。流石にすぐにはやまないだろうから、まずはメンテナンスを終わらせた方がいいと思う。
そこへ、カタンと物音が聞こえてきた。振り向いたスコッチがきょとんと瞬く。
「え…ギムレット?」
「!」
ライだろうとあたりをつけていたら、思いもよらない名前が出てきて驚いた。
「どうしたんだ?部屋で寝てるんだと思ってたけど…」
スコッチの言う通り、この時間のギムレットは大概うたた寝している。リビングでブランケットに埋もれているか、そうでなければ部屋のベッドで眠っているらしい。なお、部屋の件はスコッチが夜食を取りに来たギムレットから聞いただけで、実際に見たわけじゃないが。
「…目が覚めただけ」
ギムレットはぽつりと答えると、すたすたとこちらへ歩いてくる。スコッチの前に並べられたライフルのパーツに顔をしかめ、硝煙の臭いを避けるようにして定位置のブランケットの山へ潜った。
さて、その真隣には僕が居るわけだが。
「………」
潜ったといっても寝る態勢ではない。パソコン作業をする僕の手元をぼんやりと眠そうな顔で見ている。
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胡蝶(プロフ) - 来来(きままに更新)さん» コメントありがとうございます!一気読み頂いたうえにそんなお褒めの言葉まで…!嬉しいです…噛みしめますね…。さて、二幕も終盤でございます。遅筆ですが、どうぞ最後までお付き合い下さいませ! (9月6日 0時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
来来(きままに更新)(プロフ) - ついつい一気読みしました。文章力もそうですがギムレットの感情、安室との絡み全てが好きです!尊敬します! (9月5日 12時) (レス) @page45 id: b6c1688bfb (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 胡蝶さん» まさかお返事をいただけるなんて(;ω;)とっても嬉しいです!!もちろんお楽しみにしながら待ってます!!!♡ (7月25日 20時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - ゆいさん» コメントありがとうございます!そして、嬉しいお言葉をありがとうございます!タイムセールもお楽しみ頂けたようで何よりです笑 のんびり更新ですが、二幕も終盤に差し掛かりました。どうぞ最後までお付き合いいただければと思います。 (7月24日 23時) (レス) @page19 id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 卵のくだりがすごく面白かったです笑 (7月24日 22時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2023年7月10日 8時