Case.256 ページ14
「それで？」
「…その、コードの連絡待ちをしている間、九条捜査官が席を立った隙に『君が彼女の恋人か』と聞かれまして。…否定したら――」
――なんだ、君じゃなかったのか
――危うくミナトに報告に行くところだったよ
――アイツはいつも、“自分が一番Aに好かれてる”って自慢してたからさ
――まぁ、Aもずっとミナトしか見てなかったし、実際その通りだったんだけどな
「―――と、いうことが、…ありまして。…お伝えするべきか迷ったのですが、プライベートに踏み込むのもどうかと…すみません」
「…ああ…いや、僕の方こそすまない」
気まずそうにする風見を宥めつつ、その後はなんとか別の話題に話を逸らし、報告を終わらせた。
＊＊＊
「…んん…」
眠っていたAが、もぞもぞと動く。収まりのいい位置を探しているんだろう。なんとなく離れようとしているのを感じ取り、肩に回したままの腕を引いてこちら側へ誘導する。結果的に先程よりぴったりとくっつくことになった。若干不服そうな顔をしている気もするが、ここに関しては譲れないので我慢してもらいたい。
すぅすぅと寝息を立てる様子をじっと見ながら、風見に聞いた話を思い出す。
――危うくミナトに報告に行くところだったよ
彼にとって“ミナト”という人物がどういう存在なのかは分からないが、そのフランクな言い方からして友人と考えるのが自然だろう。
そのうえで、“連絡する”のではなく、“報告に行く”と表現するということは、――おそらく。
「…故人、か」
ぐっと、静かに拳を握りしめた。
―――“The time is out of joint.”
そのセリフについて、スコッチと――ヒロと、話していたことがある。
“この世の関節が外れてしまった”―――『ハムレット』の物語になぞらえて、僕達は彼女が近しい人物を亡くしたのだと推測した。
そしてそれは、“この世の関節”――すなわち“世界”に例えるほど、彼女にとって大きな存在。
――アイツはいつも、“自分が一番Aに好かれてる”って自慢してたからさ
――まぁ、Aもずっとミナトしか見てなかったし、実際その通りだったんだけどな
つまり、…それは。
「…恋人」
胸の奥で、何かがずしりと質量を増した。
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胡蝶(プロフ) - 来来（きままに更新）さん» コメントありがとうございます！一気読み頂いたうえにそんなお褒めの言葉まで…！嬉しいです…噛みしめますね…。さて、二幕も終盤でございます。遅筆ですが、どうぞ最後までお付き合い下さいませ！ (9月6日 0時) (
レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
来来（きままに更新）(プロフ) - ついつい一気読みしました。文章力もそうですがギムレットの感情、安室との絡み全てが好きです！尊敬します！ (9月5日 12時) (レス) @page45 id: b6c1688bfb (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 胡蝶さん» まさかお返事をいただけるなんて(；ω；)とっても嬉しいです！！もちろんお楽しみにしながら待ってます！！！♡ (7月25日 20時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - ゆいさん» コメントありがとうございます！そして、嬉しいお言葉をありがとうございます！タイムセールもお楽しみ頂けたようで何よりです笑 のんびり更新ですが、二幕も終盤に差し掛かりました。どうぞ最後までお付き合いいただければと思います。 (7月24日 23時) (レス) @page19 id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 卵のくだりがすごく面白かったです笑 (7月24日 22時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：胡蝶 | 作成日時：2023年7月10日 8時
