Case.246 ページ2
【黒ウサギ亭】と看板を掲げる店の中で、突如けたたましいアラームが鳴り響いた。
その音は、スマホに設定されている警報音で、店内が一時騒然とする。
「す、すみません…メールをチェックをしていたら、勝手に鳴り始めてしまって…！」
そう声を上げる老人の手元では、確かにスマホが音を鳴らしていた。
「貸し―――」
彼の隣にいたコナン君が、慌てて老人のスマホに手を伸ばす。だがそれより先に、横から伸びてきた手がスマホを取り上げた。
「…え？」
突然現れたその人物に、老人は目を白黒させ、僕達はぽかんと凝視する。その間に、警報音はぴたりと鳴り止んだ。
「これでOK。返すわ」
「ど、どうも…」
「このタイプのスマホは、電源ボタンと音量の＋ボタンを同時に長押しすると警報音が鳴るの。気をつけて？」
そう言って老人に忠告しているのは、どう見ても。
「A…？」
名前を口にしたら、彼女はちらりと僕を見た。心なしか視線が鋭い気がするが、気のせいだろうか。
「ええと…どうして君がここに…？」
バニーガールクラブに用事なんて無いはず。
そう思って口走った呟きを、彼女は別の意味でとらえたらしい。じっと僕を見つめていたAが、突然にっこりと笑った。
あ、これはまずい。
反射的に立ち上がろうと腰を浮かせた瞬間。
「―――Hi, honey.」
普段からは考えられないほどの甘くて優しい声に、まるで押し返されるように浮いた腰が椅子へ逆戻りした。
…どうしよう。多分、ものすごく怒ってる。
怖くて彼女から目が離せないでいると、おもむろに足を踏み出したAが、カツン、とヒールを鳴らした。
ひっと飛び出しかけた悲鳴を寸前で飲み込む。
絶対に何か誤解されているし、やましいことは何もしていないはずなのに、冷や汗と動悸が止まらない。
まずい、せめて何か言わないと。
「あの、A――」
声を絞り出した瞬間、Aの人差し指がトンッと喉元に触れた。そのままなぞるようにつぅっと撫で上げられ、顎が自然と持ち上がる。
Aと目が合った。
極上の笑顔を浮かべているはずなのに、瞳の奥は凍えそうなほど冷えていて。
「We need to talk.Don't you think so,honey?」
「…OK,sweetie.」
僕に拒否権はなかった。
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胡蝶(プロフ) - 来来（きままに更新）さん» コメントありがとうございます！一気読み頂いたうえにそんなお褒めの言葉まで…！嬉しいです…噛みしめますね…。さて、二幕も終盤でございます。遅筆ですが、どうぞ最後までお付き合い下さいませ！ (9月6日 0時) (
レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
来来（きままに更新）(プロフ) - ついつい一気読みしました。文章力もそうですがギムレットの感情、安室との絡み全てが好きです！尊敬します！ (9月5日 12時) (レス) @page45 id: b6c1688bfb (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 胡蝶さん» まさかお返事をいただけるなんて(；ω；)とっても嬉しいです！！もちろんお楽しみにしながら待ってます！！！♡ (7月25日 20時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - ゆいさん» コメントありがとうございます！そして、嬉しいお言葉をありがとうございます！タイムセールもお楽しみ頂けたようで何よりです笑 のんびり更新ですが、二幕も終盤に差し掛かりました。どうぞ最後までお付き合いいただければと思います。 (7月24日 23時) (レス) @page19 id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 卵のくだりがすごく面白かったです笑 (7月24日 22時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：胡蝶 | 作成日時：2023年7月10日 8時
