Case.245 ページ1
とあるホテルの一室。
その扉の前で、私はぴたりと足を止めた。備え付けのインターホンを押すと、ピンポンと軽快な音が鳴る。
しばらくすると、ゆっくりと扉が開いた。
「…久しぶりね。修学旅行は楽しかった?」
そこにいたのは、剣呑に目を光らせる―――真純ちゃん。
…警戒心剥き出しね。
それでもここを開けたのは、“彼女”の指示かしら。
「…ああ、まぁな」
そっけない態度にくすりと笑う。すると真純ちゃんも、対抗するように挑戦的な笑みを浮かべた。
「それで…Aさんはここに、何しに来たんだ?」
挑発のつもりだろうか。
でも、残念ながらその程度じゃ効かない。
浮かべた笑みはそのままに、穏やかな声で答える。
「―――答え合わせに」
「………っ」
真純ちゃんはぐっと口を閉じると、こっちを睨みつけたまま僅かに足を引いた。私はそれに気づかないふりをして話を続ける。
「私は“誰”か…あんなにヒントをあげたんだもの、もう答えは出たでしょう?せっかくだから直接聞かせてもらおうと思って」
「…直接…?」
ぽつりと訝しげに私の言葉を反芻した。そしてすぐに、私の要求が分かったらしい。その顔が一瞬で怒りに歪んだ。
「アンタな……ッ!?」
真純ちゃんが声を荒らげた瞬間、私はすかざす彼女の眉間を人差し指で突く。そのまま勢いに任せて後ろへ押しつつ、足元を払って態勢を崩した。
「ぐっ…!」
バタンと扉が閉まるのと、私が真純ちゃんを組み伏せるのは、ほぼ同時だった。
「ダメよ、真純ちゃん。警戒してる相手に隙を見せるなんて」
そう言って、ちらりと視線を奥に滑らせる。
「さぁ、Hide-and-Seekはこれで終わり。そろそろ顔を見せてくれてもいいんじゃない?…それとも、子供はまだ遊び足りないのかしら」
「ねぇ?―――Mary」
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胡蝶(プロフ) - 来来(きままに更新)さん» コメントありがとうございます!一気読み頂いたうえにそんなお褒めの言葉まで…!嬉しいです…噛みしめますね…。さて、二幕も終盤でございます。遅筆ですが、どうぞ最後までお付き合い下さいませ! (9月6日 0時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
来来(きままに更新)(プロフ) - ついつい一気読みしました。文章力もそうですがギムレットの感情、安室との絡み全てが好きです!尊敬します! (9月5日 12時) (レス) @page45 id: b6c1688bfb (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 胡蝶さん» まさかお返事をいただけるなんて(;ω;)とっても嬉しいです!!もちろんお楽しみにしながら待ってます!!!♡ (7月25日 20時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - ゆいさん» コメントありがとうございます!そして、嬉しいお言葉をありがとうございます!タイムセールもお楽しみ頂けたようで何よりです笑 のんびり更新ですが、二幕も終盤に差し掛かりました。どうぞ最後までお付き合いいただければと思います。 (7月24日 23時) (レス) @page19 id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 卵のくだりがすごく面白かったです笑 (7月24日 22時) (レス) id: 245f7f2888 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2023年7月10日 8時