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Case.164 ページ8

車を車庫に入れ、階段を上りながら電話をかける。
…出ない。
鳴り続けるコール音を我慢強く聞いていると、不意に無機質なアナウンスが流れて、ぷつりと通話が切れた。

「くそっ!」

悪態をつき、スマホを握りしめる。目的の階はすぐそこで、まずは家に入ろうと階段を上り切った。

そして固まった。


「………え?」


視界に飛び込んできたのは、今まさに僕が電話をした相手。

僕の部屋の前でゆったりと塀に寄りかかり、片手でスマホをいじっている。


そしてその人物は、事件の捜査中にベルモットへ手紙を渡した張本人。


「――Aっ!」


「あ、おかえり」

波土のスタッフジャンパーを片手に、Aはスマホを持った手をひょいと挙げた。

「君…っ、いや、とりあえず中に入れ!」

その場で叫びたいのをなんとか堪え、彼女の手を掴んで玄関へと連れ込む。そのまま靴を脱ぎ散らかすようにしてAと共に家に上がった。

「ちょ、待って、」

半分引きずるように引っ張ったから、足がもたついたのだろう。掴んでいた手が後ろに引かれて、やっと足が止まる。振り返ると、Aとは一歩分の妙な距離が空いていた。

「…やっぱり、クリスにコンタクトを取ったこと…怒ってる?」

なるほど、そこに対して罪悪感はあったのか。
確かに、一言の相談もなくあんな真似をされたことに思うところはある。

だが。

「…少し」
「少し?」

Aの怪訝そうな声が返ってきた。

「ベルモットに聞いたよ。首都高で会った時、様子がおかしいと思っていたけど…君が生きていると、キュラソーに気づかれていたんだな」


――生きていたのよ、あの子


安堵の微笑みを浮かべたベルモットは、東都水族館でキュラソーを奪還する直前、キュラソー本人から聞いたらしい。

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胡蝶(プロフ) - 名無しさんさん» コメントありがとうございます!とても励みになります…!しかも一気読みいただいたとのこと、とても嬉しいです!更新遅いですが、どうかお付き合いくださいませ。 (2022年12月5日 1時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
名無しさん(プロフ) - 初めまして。内容の丁寧さに惹き込まれ、昨夜から一気読みしてしまいました。とても好きです。 (2022年12月4日 20時) (レス) id: d1e259953e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年10月1日 1時

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