Case.196 -Zero the Enforcer- ページ46
「どんな手を使ってもいいなら、なんとでもなるの。相手のアカウントにウイルスでも仕込めばすぐだから。でも、証拠品として提出させたいでしょ？」
なんと言っても、ここが今回の事件の肝だ。だからこそ、万人が分かる形で突き止めなければいけない。
「そうなると、作業が地道でね。システムを組もうと思ったんだけど、ちょっと心当たりがあって。確認入れてるから、返事が来るまで少し待機中ってわけ」
すとんとイスの背もたれに背中を預けると、零はそういうことかと呟いていた。
「で、そっちはどうなの？」
「例のパソコンがもうじき届くはずだ。到着したら、手筈通りに細工を頼む」
「…ん」
淀みなく言い切られたそれは、公安警察お得意の違法作業だ。事件化のついでとはいえ、回りくどい割に大胆なことをする。
そのうえ、この方法はなかなかに強引で、酷なやり方だ。
「…怒るでしょうね、あの子」
きっと、あの子の掲げる正義は、それを許さない。
零もそれを分かってる。分かったうえで、この方法を選んだ。
「…今回の件は、なりふり構っていられないからな。君に連絡した時点で、ある程度の非難は覚悟しているさ」
困ったように眉を下げて笑うその顔は、どこか罪悪感に駆られた表情で。
それでも、後悔の色は見えなかった。
「じゃあ、精々嫌われないようにしないとね。私達2人とも」
「…すまないな。恨まれごとは、僕ひとりで受け持つつもりだったのに」
そう言って、零は今度こそ申し訳なさそうな顔で目を伏せた。
なんだ、そんなこと考えてたのか。
「零」
私が小さく手招きすると、零は目線を合わせるように屈んでくれる。その額を、他の傷に響かない程度の強さで小突いてやった。うっとうめき声が漏れる。
「…何するんだ」
「アンタがつれない事言うからでしょ」
じとりと睨んでくる目を、そっぽを向いて受け流す。
「今の私は降谷零の協力者よ。私が為すことは、すべて私の意志であって、強いられたものじゃない。アンタに守ってもらう前提の仕事なんてしてないわ。…1人で矢面に立とうなんて許さないんだから」
お返しとばかりに睨み返したら、言われたことが予想外だったらしい。ぽかんと口が開いていた。
「ほら、返事は？」
わざと嫌味ったらしく言ってやると、零はまいったなと呟いて、柔らかく笑う。
「…本当に、君は頼もしい」
「あら、やっと思い出した？」
意地の悪い顔をして、私はくすりと笑った。
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胡蝶(プロフ) - 名無しさんさん» コメントありがとうございます！とても励みになります…！しかも一気読みいただいたとのこと、とても嬉しいです！更新遅いですが、どうかお付き合いくださいませ。 (2022年12月5日 1時) (
レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
名無しさん(プロフ) - 初めまして。内容の丁寧さに惹き込まれ、昨夜から一気読みしてしまいました。とても好きです。 (2022年12月4日 20時) (レス) id: d1e259953e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：胡蝶 | 作成日時：2022年10月1日 1時
