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Case.195 -Zero the Enforcer- ページ45

ガチャ、とドアの開く音が聞こえた。

「………」

音の主はドアの前で立ち止まり、こちらを窺うような視線を送ってくる。それを一切無視してカタカタとキーボードを打ち続けること約5秒、私はぽつりと口を開いた。

「何」
「…なんだ、やっぱり気づいてたか」

拍子抜けした調子で歩み寄ってきた零は、大きなガーゼを貼った顔に苦笑を滲ませていた。

「ドアが開けば気づくでしょ」
「そうだろうとは思ったけど、タイピングの音が止まなかったから」

すぐ隣まで近づいてきた零が、横からパソコンのモニターを覗き込んでくる。頬に貼られたガーゼが視界の端に映った。

「それ…」
「ん?」

視線が私に向くと同時に、指先でそっと頬に触れる。瞬間、僅かに肌が引き攣った。

「…痛い?」
「…触ると少し、な。でも、軽い火傷だ。明日にでもガーゼは外せるよ」

伸ばした指に零の手が被さり、やんわりと引き下ろされる。
あの爆発の規模を考えれば、もっとあちこち怪我をしていてもおかしくないはずなのに。
ガーゼ1枚で足りるほどの軽い火傷で、しかも明日には外せるだなんて。

「本当、零の回復力ってどうなってるわけ?」
「はは、褒め言葉として受け取っておくよ。…それで、進捗は」

一転して真剣味を帯びた声に、私も浮かべていた笑みを消し、頭のスイッチを切り替える。

「…不正アクセスの痕跡は見つけた」

カチ、とクリック音を鳴らして、モニターにデータログを表示させた。

「なるほど、これか…」
「後でアンタの端末に送る。でも、まだ肝心のアクセス元を特定できてない。ちょっと面倒なシステム使ってるから、少し時間がかかるかも」
「君でも手こずるのか?」

意外だと言わんばかりに零の目が丸くなる。

「そうじゃなくて、単純に手間がかかるだけ。…零は“Nor”って知ってる?」

その途端、零の視線が僅かに揺れた。

「ああ…概要程度なら」
「……?」

Norに何か思うところがあるのか。
零の表情からは読み取れないけど、概要が分かってるなら話は早い。

Norとは、IPアドレスを暗号化し、複数のパソコンを経由することでアカウント元を辿れなくする、ブラウザソフトのことだ。

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胡蝶(プロフ) - 名無しさんさん» コメントありがとうございます!とても励みになります…!しかも一気読みいただいたとのこと、とても嬉しいです!更新遅いですが、どうかお付き合いくださいませ。 (2022年12月5日 1時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
名無しさん(プロフ) - 初めまして。内容の丁寧さに惹き込まれ、昨夜から一気読みしてしまいました。とても好きです。 (2022年12月4日 20時) (レス) id: d1e259953e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年10月1日 1時

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