Case.192 ページ42
「ネットワークを介して操作する以上、仕方のないことだけど…私達みたいなエンジニアにとっては頭の痛い話よね」
やれやれと肩をすくめてみせると、阿笠さんにもシェリーにも視線を逸らされる。なんとも嫌なところで分かり合えてしまったらしい。
いち早く立ち直ったのは阿笠さんだった。
「なんにせよ、原因が分かって良かったのう。直すのは無理そうじゃが…」
「直さなくても、置く場所を変えればいいんじゃない?ケーキが崩れた事以外に、不都合はなかったみたいだし」
気を取り直したシェリーが、それにと続ける。
「一般に出回ってる家電の電波干渉くらい、貴方なら簡単に改良できるでしょ?ギムレット」
どうやら相当私の腕を買ってくれているらしい。その言葉が、からかいではなく本心なのだということは、目を見れば分かった。
ふ、と口の端を持ち上げる。
「Of course―――と言いたいところだけど、…残念。たとえ原因が分からなくても、初めから私の出番はなかったわよ」
「え…どうして?」
この返答が思いもよらなかったのか、シェリーはきょとんと瞬いた。
「そもそも、ケーキが崩れた原因を突き止めるつもりはなかったみたいだから」
「はぁ?」
不機嫌そうに片眉が跳ね上がる。私に答える気がないと分かると、眉を顰めてふいっとそっぽを向いた。
不貞腐れた時の顔は、昔から変わってない。
ふと、阿笠さんが記憶を辿るように宙を仰いだ。
「そういえば、さっきコナン君に何か言っておったが…なんの話をしておったんじゃ?」
「さっき?…ああ、あれですか」
帰りかけたボウヤを引き止めたから、その時の事を言ってるんだろう。わざわざ追いかけたし、不思議に思ったのかもしれない。
「あれはただ、おつかいを頼んだだけですよ」
「お、おつかい…?」
一体何をと顔で物語る阿笠さんに、私はにこりと笑顔を返す。
「…ま、それは明日のお楽しみということで」
――明日ポアロに行ったら、透に伝えて
――“それ、3人分持ち帰りで”
目敏いな、と眉を下げて笑う零の顔が見えた気がした。
Case.193 -Zero the Enforcer-→←Case.191
571人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
胡蝶(プロフ) - 名無しさんさん» コメントありがとうございます!とても励みになります…!しかも一気読みいただいたとのこと、とても嬉しいです!更新遅いですが、どうかお付き合いくださいませ。 (2022年12月5日 1時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
名無しさん(プロフ) - 初めまして。内容の丁寧さに惹き込まれ、昨夜から一気読みしてしまいました。とても好きです。 (2022年12月4日 20時) (レス) id: d1e259953e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年10月1日 1時