Case.190 ページ40
「江戸川君…貴方、まだそれ調べてたの？」
「しゃあねぇだろ。アイツらが安室さんのケーキ食べたがってたんだから」
呆れた様子のシェリーに、ボウヤは不貞腐れた声で言い返す。
なるほど、子供達関連か。
いつもの好奇心かと思ったけど、どうやら主な理由は違ったらしい。
「それで、どういう話？」
「あ、うん。崩れるっていうか、生クリームが溶けたみたいになってたんだけど――」
曰く、前日のうちに作っておいたショートケーキが、翌朝見ると崩れていることがあるらしい。営業妨害も考えたみたいだけど、結局原因は分からなかったのだという。
それでポアロを撮ってきたってわけね。
店内にカメラを仕掛けなかったのは、零か梓さんに断られたんだろう。
「3日間撮影したうち、ケーキが崩れた2日間だけ、窓ガラスが曇って車が走っていくのが写る瞬間があったんだ。車自体はケーキが崩れてなくても通ってるんだけど、今のところ手掛かりはこれしかなくて…」
「ふぅん…？」
ボウヤが原因を探ってることは、零も把握してるはず。なのにボウヤ一人にやらせてるってことは、原因を知る必要がないか、知っても無意味だと分かっているかのどちらかだ。何かしら対処法は考えてるだろうし、あまり深刻な事態ではないらしい。
「話は分かったわ。とりあえず、その動画を解析にかけてみましょうか」
工藤邸から持ち込んだノートパソコンにボウヤのスマホを繋ぎ、解析システムを起動させる。
「それにしても、ケーキが崩れる…ね。普通に考えたら冷蔵庫の故障を疑うけど、他の食材は大丈夫だったの？」
「いや、ケーキは冷蔵庫じゃなくて、冷蔵ストッカーに入ってたんだ。でも、故障はしてなかったみたいだよ」
「そう…」
溶けるように崩れてたってことは、クリームが形を保てなかったということ。零に限って頻繁に失敗するなんてあり得ないし、そもそもケーキ自体に問題があるとは思えない。
なら、崩れたのは外的要因か。
「ねぇボウヤ。ストッカーの周りって、何か置いてある？」
動画を解析システムに落とし込みながら、私なりに原因を探る。
置き場所が悪かったり、物が邪魔して排熱が上手くできてないっていう線が個人的には濃厚だけど…。
「あったよ。電気ポットが1台」
「それだけか…」
まぁ、それが原因なら零が気づかないわけないわね。
こうなるともうお手上げだ。やっぱり話を聞いただけでは、大した推測は立てられない。この動画の解析が終われば、少しは何か分かるだろうか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 571人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
胡蝶(プロフ) - 名無しさんさん» コメントありがとうございます！とても励みになります…！しかも一気読みいただいたとのこと、とても嬉しいです！更新遅いですが、どうかお付き合いくださいませ。 (2022年12月5日 1時) (
レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
名無しさん(プロフ) - 初めまして。内容の丁寧さに惹き込まれ、昨夜から一気読みしてしまいました。とても好きです。 (2022年12月4日 20時) (レス) id: d1e259953e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：胡蝶 | 作成日時：2022年10月1日 1時
