Case.189 ページ39
「―――映像の解析をしてほしい?」
わずかに首を傾げると、眼鏡のボウヤは、いや…と困ったように頬を掻いた。
「そんなに大袈裟なものじゃないよ。ただ、少し見やすくしてほしいだけで…っていうか、どうしてAさんまでここにいるわけ…?」
青い瞳が困惑したように瞬く。
それもそのはず。
ここは工藤邸ではなく、その隣家――阿笠邸だ。
「阿笠さんが作ったドローンが気になってね。この前からお邪魔してるの」
「ほれ、4日前に子供達が来た時、ドローンが壊れたじゃろう。その修理と改修を手伝ってもらっておるんじゃ」
「ああ…勝手に飛んだっていうアレか」
あの日、子供達は探偵団バッジとかいう阿笠さんの発明品で、ボウヤと無線通話をしていたらしい。バッジを借りて少し調べたら、原因はほぼ予想がついた。
「改修はもう終わったし、後は壊れたパーツを直せば使えるようになるわ。これが自作なんて、大したものよ」
組み立て中のドローンを見て軽く肩をすくめる。すると、隣から小さなため息が聞こえた。
「それにしても、こんな些細なことに首を突っ込んでくるなんて…FBIも案外暇なのね」
「言うようになったじゃない、シェリー?一緒にプログラムを組み直した時はあんなに楽しそうだったのに」
からかうようにくすりと笑ってやれば、シェリーの頬に朱が上る。
「ち、違うわよ!あれは…その、プログラムを組むのが楽しかっただけで…!」
「あらそう?じゃあそういうことにしておいてあげる」
慌てて否定するのを笑顔で受け止めると、うっと言葉を詰まらせてそっぽを向かれた。
シャイだとは思ってたけど、相変わらず可愛いこと。
「それで、ボウヤが解析してほしい映像は?」
そろそろ本題に入ってあげようと話を向けると、ボウヤは自分のスマホの画面を見せてくれた。
「これなんだけど…」
シェリーと阿笠さんと3人で画面を覗き込むと、映っていたのはポアロの外観だった。上から見下ろすような角度がついているのを見るに、おそらくボウヤが探偵事務所から撮ったんだろう。
「これがどうかしたの?」
見たところ、何の変哲もないただの動画に見えるけど。
「Aさんは、ポアロで出してる安室さんのケーキが崩れるって話は知ってる?」
「ケーキが…崩れる?」
知らない話だ。
最近の零は東京サミットの準備で忙しそうだし、あんまり話はできてないのよね。
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胡蝶(プロフ) - 名無しさんさん» コメントありがとうございます!とても励みになります…!しかも一気読みいただいたとのこと、とても嬉しいです!更新遅いですが、どうかお付き合いくださいませ。 (2022年12月5日 1時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
名無しさん(プロフ) - 初めまして。内容の丁寧さに惹き込まれ、昨夜から一気読みしてしまいました。とても好きです。 (2022年12月4日 20時) (レス) id: d1e259953e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年10月1日 1時