Case.172 ページ22
「そっか、ボウヤから…。完全に盲点だったな…」
「まぁ、聞いたのは昨日で、急に連絡が取れなくなった時はさすがに焦ったけどな」
ある意味、彼女が身を寄せている家が簡単に踏み込めない場所で良かった。もしも突入して家の中がもぬけの殻だった暁には、あんなに平静でいられなかったかもしれない。
「…悪かったわ。でも一応、向こうに着いてから電話もメールもしたのよ?届かないようになってたみたいだけど」
そう言われて、やはりそうかと納得した。
僕のスマホは、セキュリティの関係で海外からの着信は受け付けないようになっている。風見に帰国の可能性を指摘されて調べてみたところ、Aが消えて2日ほど経った頃に数回着歴があった。
「でも、今後は気をつけるわ。だから…許してくれる?」
「言っただろ、怒ってないって。…僕の方こそ、あの朝のことを謝らないと」
この話を持ち出すのは気まずいが、言わないわけにもいかない。Aはああ、と口を開いた。
「あれは完全にアンタが悪いわね。またやったら容赦しないわよ」
「……すまん」
脇腹に突き刺さった肘を思い出す。あれで容赦されていたのだろうかと思わないでもない会心の一撃だったが、余計なことは言うまい。ここは殊勝に謝っておく。
「まったく…やるならせめてシャワーのあとにしてよね」
「…分かった」
風呂上がりならいいのか。
まさかのお許しに驚いていると、不意にAの手が背中に回った。
「まぁでも、気持ちは分からなくもないわ。私も零の香水好きだし」
肩口に頬を寄せて、Aはくすくすと笑う。
「そんな零に、1つ提案があるんだけど」
「……提案?」
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胡蝶(プロフ) - 名無しさんさん» コメントありがとうございます!とても励みになります…!しかも一気読みいただいたとのこと、とても嬉しいです!更新遅いですが、どうかお付き合いくださいませ。 (2022年12月5日 1時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
名無しさん(プロフ) - 初めまして。内容の丁寧さに惹き込まれ、昨夜から一気読みしてしまいました。とても好きです。 (2022年12月4日 20時) (レス) id: d1e259953e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年10月1日 1時