検索窓
今日:81 hit、昨日:386 hit、合計:135,846 hit

. ページ13

そこでふと、つい最近聞いた噂を思い出す。

ウォッカが必死になるのは、大抵ジンに関連することばかりだ。首の傷がウォッカの女でないとしたら、思い当たるのは一つしかない。

…もしかして。

「…ねぇ、ウォッカ?」
「ひ、」

うっそりと笑って目の前の男を見下ろす。反射的に腰を引いたのか、ウォッカはソファの背もたれにぴたりと張り付いた。


「最近ジンが拾い物をしたそうだけど…何か知ってるわね?」



5秒ほど経ってから、へい、と蚊の鳴くような声が返ってきた。


◇◇◇


「ああ、ここね」

ウォッカの運転で案内された洋館は、知っている場所だった。ジンが所有しているセーフハウスで、何度か来たことがある。
確か内装はアンティーク調で、なかなかいい雰囲気だったはず。ジンの気に入ってる場所の1つよね。

「兄貴は中にいらっしゃいやす」
「分かったわ」

ウォッカが奥へ車を回すのを尻目に中へ入る。まっすぐリビングルームへ向かうと、ソファで煙草をふかすジンの姿が見えた。

「…チッ」

開口一番、聞こえてきたのは舌打ちだった。

「ちょっと、何よその態度」

多少の嫌味は流すつもりでいたけれど、舌打ちだけなんて随分なご挨拶じゃない。

「フン…野次馬感覚で来たヤツに、くれてやる言葉なんざねぇよ」
「だって気になるじゃない?ただの拾い物だと思ってたのに、まさか貴方が檻まで用意して囲ってるなんて」

くすりと笑えば、鋭い視線がじろりと私を睨みつける。薄く笑みを浮かべたままそれを受け止めると、暫くしてジンがため息をついた。

「…まあいい。見てぇんなら勝手にしろ」
「あら、いいの?私が連れ出すかもしれないわよ」

てっきりついてくると思っていたのに、勝手にしろだなんて。私にその気がなくても、隙を突いて逃げる可能性は十分にある。
すると、ジンはくつくつと喉を鳴らした。

「なぁに、アイツは逃げたりしねぇさ」
「随分な自信ね。それだけ貴方に懐いてるってことかしら」
「…見りゃ分かる」

吸い込んだ煙を吐き出しながら、灰皿に灰を落とす。
もったいぶるわね…。

「アイツは“奥”にいる。さっさと行け」
「はいはい」

ひらりと片手を振って、“奥”と言われた部屋へ向かう。

.→←.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (135 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
570人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

胡蝶(プロフ) - 名無しさんさん» コメントありがとうございます!とても励みになります…!しかも一気読みいただいたとのこと、とても嬉しいです!更新遅いですが、どうかお付き合いくださいませ。 (2022年12月5日 1時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
名無しさん(プロフ) - 初めまして。内容の丁寧さに惹き込まれ、昨夜から一気読みしてしまいました。とても好きです。 (2022年12月4日 20時) (レス) id: d1e259953e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年10月1日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。