第8夜 ページ8
「よかった、なくしてなかった…!」
「大切なものなのか?」
「うん。大切な人とのお揃いなんだ」
受け取った杖をぎゅっと胸に抱く。その様子からして、“大切な人”とは恋人だろうかと、漠然と思う。
「さてと、魔法だね。使ってみせるから、ちょっと見てて?」
「は?」
「いくよ、“氷魔法”(サルグ)」
聞きなれない言葉ともに、Aの周りにキラキラと光を反射する氷の結晶が浮かんだ。
「な、これは…!?」
「まだまだ。“水魔法”(シャラール)」
今度は氷の結晶が水の塊に姿を変える。
「“熱魔法”(ハルハール)」
すると、ジュウ、という音とともに水の塊が炎に包まれた。
「………!?」
降谷も風見も呆気にとられて声が出ない。
降谷は今日何度目かわからない、“なんだ今のは”を頭の中で繰り返す。
「ほら、これが魔法。見たことない?」
「………、…ない」
それが精一杯の返事だった。
「んん…そうか、本当に知らないみたいだね…。もしかして、概念が及ばないって、そういうことなのかな。でも、世界が違うのに言葉もわかるし字も読めるみたいだし…これもあの魔法のおかげ…?」
「…とりあえず、君は絶対に外で魔法を使ってはいけないよ。誰かに見られたら、どうなってしまうか……」
「どうって…ああ、もしかしてどこかに閉じ込められたり、売られてしまったりするのかな?貴方たちにとっては、そんなに不思議なもの?」
降谷の忠告にこてんと首を傾げるAに、降谷は頭を抱えたくなった。
平然となんてことを言うんだ。一体どんな世界で生きていたんだこの子は。そういえばさっき戦争で死にかけたとか言ってたが、本当にどんな戦争だったんだ。
「…まあ、そういうことも、ある…かも」
閉じ込めるはさておき、売られることはないと言いたかったが、この子の場合ちょっとどうなるかわからない。
「そっか。でも多分大丈夫だよ。腕っぷしにはそれなりに自信はあるし、いざとなったら魔法で逃げられるし」
それは安心できない。
「…あの、降谷さん」
今度こそ頭を抱えた降谷に、風見がやっとの思いで話しかけた。
「自分は、何のために呼ばれたのでしょう…」
「………ああ、そうだった。いや、そうだよな、悪い」
あまりのいろいろな衝撃に、すべて吹っ飛んでいた。
146人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
胡蝶(プロフ) - ゆめさん» コメントありがとうございます!お、恐れ多いです…!蔵出しなので更新遅いですが、どうぞお付き合い下さいませ! (2022年7月5日 3時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ(プロフ) - 好きな作品と好きな作品が合さってる上に最推し落ちとか神ですか!?この小説を推させてもらいますね!!! (2022年7月3日 22時) (レス) id: acb22861a5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年6月25日 12時