第46夜 ページ46
「うーん…やっぱり一度転送魔法で戻るべきかな。だったら人のいないところに行かないと…」
「あの」
「いや、そもそもここから離れられないから、やっぱりダメ…?じゃあ零さんに連絡…ううん、お仕事忙しいのに邪魔しちゃダメだよね…」
「あの、すみません」
「うわあ!?」
文字通り飛び上がったAは、そろそろと声のした方を振り向く。
「驚かせるつもりはなかったのですが…。何度も行ったり来たりしているようなので、お困りごとかと」
そう言ったのは、金髪で眼鏡をかけた男性。どこか柔和な印象の顔立ちをしていた。
「ああ…うん、実はそうなんだ。どうやら道に迷ってしまってね」
驚きはしたが、助けてくれるなら願ったり叶ったりだ。
「道に迷う…ということは、この近くに引越しでも?」
「近くじゃないんだけど、ええと…“ここ”には最近来たばかりでね。ちょっと探検してたんだ」
「…探検?」
「うん、探検」
何か言いたげだったが、こくんと頷いて見せれば、そうですかと返事が返ってきた。
「私でよければ、わかる場所までお連れしましょうか?」
「いいのかい!?」
「ええ。土地勘がなければ、口で言ってわかるものでもないでしょうし」
「とっても助かるよ!ありがとう!」
ぱぁっと顔を輝かせて、Aは心の底から安堵した。
「では、少し待っていてください。戸締りだけしてきます」
「うん、わかった」
そう言うと、男性は急ぎ足で家に戻って行く。その後ろ姿を見送ってから、Aは不思議そうに小首を傾げた。
「なんで疑われてるのかな?」
彼女の声が、男性に届くことはなかった。
◇◇◇
ぱたんと玄関の扉を閉じて、彼――沖矢昴は小窓から門の方を見つめた。
言われた通り、彼女は門の前で待っている。
“金髪碧眼の美女”
彼の少年が言っていたのは、十中八九彼女のことだろう。見ればわかると言っていたが、確かにその通りだった。組織の仲間かもしれないと聞いていたが、昨日勘違いだったと連絡が入っていた。
確か名前は、桃花Aといったか。
あの少年の読みを疑うわけではないが、沖矢としてはできればこの目で確認しておきたい。そう思っていた矢先に向こうから現れるとは、まさに僥倖といったところか。
「…さて、あまり女性を待たせるわけにはいかないな」
戸締りをして門の方へ戻ると、沖矢の姿に気づいたAがぶんぶんと手を振っていた。
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胡蝶(プロフ) - ゆめさん» コメントありがとうございます!お、恐れ多いです…!蔵出しなので更新遅いですが、どうぞお付き合い下さいませ! (2022年7月5日 3時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ(プロフ) - 好きな作品と好きな作品が合さってる上に最推し落ちとか神ですか!?この小説を推させてもらいますね!!! (2022年7月3日 22時) (レス) id: acb22861a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年6月25日 12時