第25夜 ページ25
「ああ、彼女は違うよ。生まれも育ちも外国でね、日本に来るのは初めてなんだ」
「へぇ〜、それにしては日本語がすっごく上手だよね!」
「日常生活でたまに使っていたみたいだよ。難しい単語は覚えていないらしいけど」
「うん。今、頑張って勉強してるところなんだ」
実際、新しく買った歴史書や教本を読んで勉強しているので嘘ではない。
そこで、テーブル席からのオーダーが入る。降谷がすみませんと断ってカウンターを出て行った。
「そうなんだ!じゃあ、Aさんはどこから来たの?」
コナンとしては、何の変哲もない質問だった。
しかしAは、もう見ることのない情景を思い出して、ふつりと口を閉じる。
「…Aさん?」
「ああ…うん。…とっても遠いところ…かな」
一瞬伏せられた表情は、すぐに笑みへと変わった。
すかさずコナンがつっこむ。
「それってどこ?」
「とっても遠い国だよ」
「なんて名前?」
「君が知らない国さ」
なんだそりゃ。
コナンは仕方なく聞き出すのを諦めた。
「Aちゃーん、奥からドリップ用のコーヒー豆取ってきてもらえる?」
「うん、わかった」
そうしてパタパタと引っ込んでいくのを見届けてから、梓はコナンに向かって声を潜めた。
「コナン君、あんまりAちゃんに、外国でのこと聞かないであげて?」
「え、どうして?」
「何かあったんですか?」
梓の雰囲気に、蘭が心配そうに声をかけ、小五郎は耳を澄ませる。
「私も詳しく聞いたわけじゃないんだけど、向こうにいた人たちとは、もう誰にも会えないって言ってたのよ。日本にも、1人で来たみたいだし」
『!』
それで、3人はなんとなく事情を察した。
会えないというのは曖昧な表現だが、少なくとも良い思い出ではないだろう。
「梓さん、コーヒーってこれで合ってるかな?」
ひょこっと奥から顔を出したAが、腕に抱えたコーヒー豆の袋を見せる。
「うん、合ってる。じゃあ、ここに補充してもらえる?」
「はーい」
カラカラと豆を補充し始めるAを見ながら、蘭がふと気づいた。
「じゃあ、Aさんって一人暮らしされてるんですか?」
「いいや、透さんの家に置いてもらってるよ」
「え、ウソ!」
さらっと答えられたそれに、蘭は驚きつつも甘酸っぱいものを予想した。
驚愕したのは小五郎である。
「安室君と2人で住んでんのか!?」
「そうだよ。透さんが、その方が安心だからって」
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胡蝶(プロフ) - ゆめさん» コメントありがとうございます!お、恐れ多いです…!蔵出しなので更新遅いですが、どうぞお付き合い下さいませ! (2022年7月5日 3時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ(プロフ) - 好きな作品と好きな作品が合さってる上に最推し落ちとか神ですか!?この小説を推させてもらいますね!!! (2022年7月3日 22時) (レス) id: acb22861a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年6月25日 12時