第20夜 ページ20
「…君は強いな」
「え?」
降谷の敗北により、今夜も一緒のベッドに入ったAを見ながら、降谷はぽつりと呟いた。
「昼間の話さ。君はもう、先へ進もうとしている」
病院で涙を流していたのに、まだ辛いはずなのに、――前を向くのだと。
簡単なことではない。
「零さんだって強いよ」
不意に告げられたそれに、降谷は思わず瞬いた。
「…え、」
透き通るような蒼い瞳が、こちらを覗く。
「ううん、零さんの方が強いかな。私は会えなくなってしまっただけだから」
言葉の裏に隠されたそれに、旧い友人たちの姿が脳裏をよぎった。
「なんで、それを…!?」
話してはいない。
いや、話すはずがない。
驚愕に目を瞠る降谷に、Aは困ったように目を伏せた。
「ごめんね、わかってしまうんだ。…いや、ちょっと違うかな。すべては、ルフが教えてくれるから」
“ルフ”
それは、魔力の源であり、すべての生物の魂が還る所。
世界の魂を繋ぐ、――“世界の血潮”。
故に、生き物は皆、平等にそれを共有している。
「ルフはその人の本質そのものなのさ。経験も記憶も、すべてルフが記録しているからね。…だから、どんな人なのか、何を抱えているのか、わかってしまうのさ。…なんとなく、だけどね」
つまり、一目見ただけで相手の心や本質をある程度見抜けるということか。
「…じゃあ、ルフが視えるという魔法使いは、皆そうなのか?」
「いいや。ルフと話せるのはマギだけだよ」
「マギ?」
また知らない単語が出てきた。
訊くと、“創世の魔法使い”とも呼ばれる彼らは、歴史の節目に現れ、それぞれの時代に3人しか存在しないという。
「いろいろあって、私のいた時代には5人のマギがいたんだけどね。ジュダルもその1人さ」
そうだったのか。すごい人だったんだなジュダル君。
図らずもAの恋人が重要な立ち位置だったことが判明し、月並みな言葉が頭によぎる。
「マギには世界を治める王の選定をする役目があるんだ。その見極めのために迷宮を創り出す能力があったり、王の器として選んだ人物を導いたり…まぁ、普通の魔道士とはちょっと違うことができるだけなんだけれど」
「………そうか」
ちょっとどころかめちゃくちゃすごくないかそれ。たった5人しかいなくて、世界の王を選んだり導いたりする役目なんてすごすぎやしないか。
というか、そのマギにしかできないことをやってのけたAはまさか。
「…Aも、そのマギなのか?」
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胡蝶(プロフ) - ゆめさん» コメントありがとうございます!お、恐れ多いです…!蔵出しなので更新遅いですが、どうぞお付き合い下さいませ! (2022年7月5日 3時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ(プロフ) - 好きな作品と好きな作品が合さってる上に最推し落ちとか神ですか!?この小説を推させてもらいますね!!! (2022年7月3日 22時) (レス) id: acb22861a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年6月25日 12時