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第14夜 ページ14

「戸籍の登録は済んだ。君の希望通り、名前は桃花(トウカ)A。外国育ちの、僕の遠い親戚ということにしてある」
「私と貴方、髪と目の色が似てるもんね。名案じゃないかな」

肌の色は違えど、同じ金髪碧眼。押し通すことはできそうだ。

「とはいえ、23歳だからな。この世界での生活に馴染むためにも、アルバイト……簡単な仕事をやってもらいたい」
「いいよ。確かに国の事情を知るには、商売するのが手っ取り早いからね。私も旅をしていたときは描いた絵を売っていたし、異論はないよ」

どうやら旅の資金は絵を売って稼いでいたらしい。

「そうだ、ひとつ聞いてもいいかい?」
「なんだ?」
「さっきの常識とやらに載っていたんだけど、“円”っていうのはこの国の通貨?」
「ああ、そうだが…もしかして、物々交換だったのか?」

価値観の違いに一抹の不安を抱いた降谷だが、Aはいいやと否定した。

「確かに、場所によってはそういうところもあったけれどね。でも、基本は金貨や銀貨だったから」
「なるほど。それならなぜ、“通貨”を知っているんだ?」
「ある国がね、そういうものを使っていたんだ。…金貨や銀貨に慣れていたから、価値の変動する通貨はちょっと面倒だなぁ」

まあ、慣れれば問題ないかとAは自分を納得させる。

「どっちにしても、今は銅貨一枚も持っていないことだし、頑張って仕事して貯めないとね」
「そうしてくれ。働く場所は、僕が働いている飲食店に掛け合ってみよう。そのほうが都合がいい」
「わかった。零さんに任せる」
「決まりだな。準備は明日するとして、まずは休め」

立ち上がった降谷は、空になった湯呑みを回収すると、キッチンへ向かった。

「零さんは寝ないの?」
「食器片付けてからな」
「それなら終わってるよ?」
「は?―――あ」

食器どころかポトフを作った鍋まで綺麗に洗われていた。

「ね?」
「…寝ようか」

その後、どちらがベッドで寝るかの押し問答が始まるのだが、今はまだ知らない。

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胡蝶(プロフ) - ゆめさん» コメントありがとうございます!お、恐れ多いです…!蔵出しなので更新遅いですが、どうぞお付き合い下さいませ! (2022年7月5日 3時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ(プロフ) - 好きな作品と好きな作品が合さってる上に最推し落ちとか神ですか!?この小説を推させてもらいますね!!! (2022年7月3日 22時) (レス) id: acb22861a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年6月25日 12時

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