第2夜 ページ2
「Aさん、Aさん！！」
「う……？」
ぼんやりと目を開ければ、ぼろぼろと涙を流すアラジンが目に入った。
ああ、終わったんだ。
ゆっくりと目を動かせば、いるのはアラジンだけじゃない。
すぐ脇には、アリババやモルジアナ、白龍がいて。
その周りは、大勢の戦士と、前線で戦っていた金属器使いや眷属たちに取り囲まれていた。上空にはアルバやユナンもいる。
―――そして。
「ね…ジュダル…、君の顔が、見たいな…」
自分を抱きすくめて泣いている、世界で一番大切な人。
ゆっくりと体を離され、ぐずぐずと鼻を鳴らす不機嫌な顔が目に入る。
「怒ってる…？」
「当たり前だろ…！」
これは相当怒ってるなぁ。
とめどなく頬を伝う涙を拭おうとしたけれど、腕が上がらなくて諦めた。
ちらりと腹の辺りへ目をやれば、まだじわじわと血が流れている。それなのに、もう痛くない。
呼吸が苦しくて、頭に靄がかかったように意識がぼんやりしてきた。
…寒い。
血をたくさん流しすぎたせいだろう。それなのに体が震えもしないのは、それだけの力も残っていないということだ。
どうやら自分はここまでらしい。やりたいことはまだたくさんあったけど、でも。
「君の腕の中で、ルフに還ることができるなら…、これ以上…幸せなことはないなぁ…」
そう、幸せだ。
こんなにたくさんの人に囲まれて。
大好きな人たちに見守られて。
大切な人の腕の中で逝けるなんて、アルマトランにいた頃は考えもしなかった。
だから、もう十分。
そう気持ちを込めて、Aは精一杯微笑んでみせる。
しかし、ジュダルはぎゅっと眉根を寄せて、Aの細い体を抱きしめた。
「それでも俺は、お前に死んで欲しくねぇんだよ……ッ！」
そう言って、ジュダルはAを抱き上げると、アラジンの方へ向き直った。
「本当にいいんだね？」
「…ああ。こいつが死ぬよりずっといい」
「…わかったよ」
乱暴に涙を拭ったアラジンは、Aを見つめる。
その瞳が寂しげに揺れたのを見て、Aはどうしてか嫌な予感がした。
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胡蝶(プロフ) - ゆめさん» コメントありがとうございます！お、恐れ多いです…！蔵出しなので更新遅いですが、どうぞお付き合い下さいませ！ (2022年7月5日 3時) (
レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ(プロフ) - 好きな作品と好きな作品が合さってる上に最推し落ちとか神ですか！？この小説を推させてもらいますね！！！ (2022年7月3日 22時) (レス) id: acb22861a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：胡蝶 | 作成日時：2022年6月25日 12時
