Case.127 ページ9
夏なのに首の締まった服しか着れないなんて最悪。
―――とは、思うけれど。
「これが嬉しいと思う私も大概か…」
じわじわと顔に集まってきた熱を冷ますように、冷水を頭からかぶる。
以前零に、好意がある種の執着だから怖いという話をした。
その感覚は、今でもある。
「…けど、相手が零だと思うと、怖くなくなるのよね…」
――嫌じゃ、なかったから
――だから、アンタに対して怖いっていう感情はないかな
もう、どう考えても好きと言っているようにしか聞こえない。なんであの時の私はそれが分からなかったのか。
認めよう。あれは私が悪かった。
過去の言動を反省しつつ、シャワーを終えて身支度を整える。
コーヒーを淹れて自室にあがり、パソコンを起動させた。
「…仕事しよ」
仕事と言っても、昨日の件の簡単な情報操作だ。偽の情報や別の話題で興味を半減させて、早く収束させるのが狙い。
わざわざ私がやらなくても、日本警察が何かしらの対策は立ててるだろうけど。
でもまぁ、今回は特別ってことで。
緊急事態とはいえ、日本のシステムを色々とハッキングさせてもらった。もちろん跡は残していないけど、少しだけ国家機密にも触れたし、これはそのお詫びだ。
カタカタとキーボードを叩き、SNSや投稿動画をさらっていく。停電や観覧車の車輪が外れた話が多いけど、それよりも銃撃戦があったという話の方が圧倒的に多い。
これは零が知ったら怒るだろうなぁ。
日本でこんな字面を見るなんてまず無い。これでテロだなんだと始まったら絶対に面倒だ。
複数の使い捨てアカウントでいくつか種をまいておき、誘導をかける。ちょっと数が多いから警察の目に留まるかもしれないけど、警察側にとっても悪い話じゃないから大丈夫だろう。
「…ん?」
スマホが光った気がして画面をつけてみると、零からメールが届いていた。
《もし良かったら、ポアロに来ないか?》
「……零ってば体いくつあるのかしら…」
朝起きた時、今日は公安だって言ってたはずよね。
午後にシフト入れてたってこと…?
梓さんに悪いとは言ってたけど、昨日の今日なんだから少しくらい休めばいいのに。
それに。
「全く、会いたいなら素直にそう言いなさいよね」
妙なところで遠慮するのは、恋人という関係になっても変わらないらしい。
会いたいと思ってるのは、アンタだけじゃないんだから。
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胡蝶(プロフ) - 藍色さん» コメントありがとうございます!もったいないお言葉です…が、とてもとても嬉しいです!語彙力捻り出しながら書いた甲斐がありました…。書くのが遅い上に煮詰まっていて遅筆に拍車がかかっておりますが、どうかお付き合いくださいませ。 (2022年8月17日 13時) (レス) @page14 id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
藍色(プロフ) - 作者様のキャラの感情表現、文才能力が凄すぎます…!度々一人で悶えながら読んでます!面白い作品に出会えて私は幸せです(´;ω;`)更新楽しみに待ってます! (2022年8月16日 3時) (レス) id: 82bbddf0f3 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - ねるさん» コメントありがとうございます!一気読み嬉しいです!書くのが遅くてお待たせしておりますが、頑張って更新いたします…! (2022年8月9日 15時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ねる - 一気読みしてしまいました!続き待ってます!更新頑張ってください(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎) (2022年8月8日 9時) (レス) @page27 id: a5b6221b88 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます!楽しんで頂けて嬉しいです!特に二幕はデレ期のつもりなので…距離感を詰めていく様子にお付き合い下さいませ! (2022年7月14日 20時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年6月25日 12時