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雨の音が響くのを聞きながら、私はリビングのソファで本をめくっていた。
…集中できない。
ため息を吐いて本を閉じ、薄暗くなった窓を見やる。
ただの雨音ならどうとも思わないけど、生憎今日の天気は最悪だ。
大粒の雨がひっきりなしに窓を叩いて、ガタガタと揺れている。おまけに遠くで雷も鳴ってるし、音と光からして、あと2時間もすればこっちに流れてくるだろう。
ああ、本当に――最悪。
いつもだったら、こんな日はさっさと寝てしまうのに、どうしてか今日は目が冴えてしまって。
「………」
窓から目を逸らすと、テーブルの脇に寄せてあったノートパソコンが視界に入る。そこには、パーカーのフードを被った、無精ひげのツリ目の男が映っている。
「…自決、か」
それは、つい昨日の事だった。
“スコッチはNOC”
組織内にその情報がリークされたのと、ライが保護に向かうと連絡を送ってきたのはほぼ同時だった。
私はジンとの任務中でバックアップはできなかったけど、ライだって優秀な捜査官だ。いけ好かないけど、この件はあの男一人で十分対応できる。だから、心配はしていなかった。
訃報の連絡は、それから30分ほど経った後のことだった。
あの時何があったのかは、ライから報告を受けて知っている。
…悔しいな。
この家で一緒に過ごしたからこそ分かる、スコッチの潜入捜査官としての優秀さ。無害そうな顔で笑うくせに、こんな組織のただなかにいても違和感なく溶け込んでいた。
だからこそ見抜けなくて、後手に回ったのが仇になった…か。
「…皮肉だな」
そこまで考えたところで、私はノートパソコンを閉じた。
…ダメだな。思いの外引きずられてるみたい。
少し落ち着こうと、ホットミルクの入ったマグカップに手を伸ばす。
―――その時。
コン、と何かを叩く音がした。
「―――…」
ぴたりと手を止め、静かに息を潜める。しばらくすると、もう一度コンと音が鳴った。どうやら玄関の方から聞こえているらしい。
誰…?
ジンではない。ベルモットも違う。ライはもってのほかだ。
閉じたばかりのノートパソコンを再び開き、玄関の監視カメラを表示させる。
「え…どうして…」
映し出されたのは、意外な人物。
「っ、」
私は急いで玄関に向かい、ドアを開けた。
「何、やってんの。―――バーボン」
そのコードネームを口にすると、ぽたりと雫を滴らせる金髪の隙間から、仄暗い蒼の瞳が私をとらえた。
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胡蝶(プロフ) - 藍色さん» コメントありがとうございます!もったいないお言葉です…が、とてもとても嬉しいです!語彙力捻り出しながら書いた甲斐がありました…。書くのが遅い上に煮詰まっていて遅筆に拍車がかかっておりますが、どうかお付き合いくださいませ。 (2022年8月17日 13時) (レス) @page14 id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
藍色(プロフ) - 作者様のキャラの感情表現、文才能力が凄すぎます…!度々一人で悶えながら読んでます!面白い作品に出会えて私は幸せです(´;ω;`)更新楽しみに待ってます! (2022年8月16日 3時) (レス) id: 82bbddf0f3 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - ねるさん» コメントありがとうございます!一気読み嬉しいです!書くのが遅くてお待たせしておりますが、頑張って更新いたします…! (2022年8月9日 15時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ねる - 一気読みしてしまいました!続き待ってます!更新頑張ってください(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎) (2022年8月8日 9時) (レス) @page27 id: a5b6221b88 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます!楽しんで頂けて嬉しいです!特に二幕はデレ期のつもりなので…距離感を詰めていく様子にお付き合い下さいませ! (2022年7月14日 20時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年6月25日 12時