Case.149 ページ36
――しかして、事件は無事に解決した。
初めに睨んだ通り、犯人は被害者と同じバンドのキーボードだった。
動機は、道に飛び出した子供を助けようとして交通事故で亡くなった元ボーカルの死因を、被害者の傍若無人な言葉を苦に自ら命を絶ったのだと取り違えた、勘違いによるもの。
…これだから、憶測で動く人間は嫌いなのよ。
大した裏付けもないくせに、自分の導き出した結論を信じて疑わない。突き進んだ結果がこれだ。同情の余地はない。
警察に肩を掴まれたて連行されていく彼女の背を見送っていると、女子高生達が真純ちゃんの事件解決の様子を凄い凄いともてはやしていた。
「そうかぁ？まぁ、安室さんとコナン君が手伝ってくれたから、このくらいは楽勝さ！」
「さすがJK探偵！」
「ま、僕が探偵やってるのは、兄の影響だけどね」
へぇ、兄…ね。
「それって、さっき話してた“秀兄”？」
さも知らない風を装って口を挟むと、こちらに警戒した眼差しが向いた。ついでにボウヤからの視線も感じる。
「…ああ。一番上の兄だよ。…もう亡くなってるけどな」
「そう…。悪いわね、嫌なこと聞いたわ」
わざとらしく気の毒そうな雰囲気を漂わせて引き下がると、真純ちゃんは片眉をつり上げた。
何か言いたげな顔ね。
大方予想はつくけど。
その雰囲気を感じているのかいないのか、園子ちゃんが間に入ってきた。
「もしかしてそのお兄さん、刑事で殉職しちゃったとか？」
「…ああ、そうだよ。と言っても、日本の刑事じゃなく、アメリカ連邦捜査局――FBIのエージェントだけどな」
そこで、ずっと様子を窺っていたらしいボウヤが口を開く。
「…ねぇ、お兄さんの名前って…」
「赤井秀一っていうんだ！カッコイイだろ？」
真純ちゃんが得意げに秀一の名前を口にした。途端に、ボウヤが僅かに目を眇める。
どうやら、これまで真純ちゃんと秀一の繋がりを掴みあぐねていたらしい。見てる限り、真純ちゃんもボウヤに意図があって近づいてる節があるし、そろそろこの子のことも少しずつ調べた方がいいかもしれないな。
「じゃあそのベースを教えてくれた人も、FBIだったりして！」
「どうかな。兄が休暇で日本に来た時に会った、友達なんじゃないか？」
その時、何かがピリッと肌を刺した。
「……！」
ああ、これは。
そっと隣を窺い、口をつぐむ。
これは――いけない。
いつも澄んでいるはずの蒼い瞳に、昏い光が宿っていた。
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胡蝶(プロフ) - 藍色さん» コメントありがとうございます！もったいないお言葉です…が、とてもとても嬉しいです！語彙力捻り出しながら書いた甲斐がありました…。書くのが遅い上に煮詰まっていて遅筆に拍車がかかっておりますが、どうかお付き合いくださいませ。 (2022年8月17日 13時) (
レス) @page14 id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
藍色(プロフ) - 作者様のキャラの感情表現、文才能力が凄すぎます…！度々一人で悶えながら読んでます！面白い作品に出会えて私は幸せです(´；ω；｀)更新楽しみに待ってます！ (2022年8月16日 3時) (レス) id: 82bbddf0f3 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - ねるさん» コメントありがとうございます！一気読み嬉しいです！書くのが遅くてお待たせしておりますが、頑張って更新いたします…！ (2022年8月9日 15時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ねる - 一気読みしてしまいました！続き待ってます！更新頑張ってください(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎) (2022年8月8日 9時) (レス) @page27 id: a5b6221b88 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けて嬉しいです！特に二幕はデレ期のつもりなので…距離感を詰めていく様子にお付き合い下さいませ！ (2022年7月14日 20時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：胡蝶 | 作成日時：2022年6月25日 12時
