Case.148 ページ35
話を聞きながら、あの日聞いた報告と同じだなと胸の内で呟く。
そしてその報告を聞いた相手は、実はバーボンじゃなくライだ。
その頃は既に同じFBIだと分かっていて、組織が真純ちゃんに近づかないよう、報告と同時に隠蔽を頼まれたのよね。
追いかけられるほど妹に慕われているのが意外すぎて、何度か聞き返したら凄まれたのをよく覚えてる。
「それで、言われた通りに待ってたの?」
「ああ、泣きそうな気分でね。でもさ、その時秀兄の連れの男が、“君、音楽好きか?”って言って、ケースからベースを出して僕に教えてくれたんだ!ドレミの弾き方をね」
それを聞いて納得した。
へぇ、そういう経緯だったんだ。
スコッチは面倒見がよかったし、真純ちゃんを放っておけなかったんだろう。
すかさず園子ちゃんが食いついた。
「で!?その人の名前聞いた!?」
「いや、聞いてないけど…そのホームに来た別の連れの男が、その人の事こう呼んでたよ」
「――“スコッチ”ってね」
『“スコッチ”…?』
「………」
探るような視線が肌に刺さる。それを気づかないふりして受け流すと、聞き慣れない名前に女子高生達が訝しげな声を上げた。
「外国の人…?」
「どっからどう見ても日本人だったから、ただの渾名なんじゃないか?…でもさ」
きろり、と真純ちゃんの目が一点を向く。同時に、纏う雰囲気に明確な敵意が混ざった。
「彼をそう呼んだ男…帽子を目深にかぶってたから顔は見えなかったけど、似てる気がするんだよね」
「安室さん――アンタにな!」
はっきりとした疑いを向けられ、そっと零の様子を窺う。その表情を見て、いらない気を回したことを悟った。
「人違いですよ。そんな昔話より、今ここで起きた事件を解決しませんか?…君も探偵なんだよね?」
「…ああ、そうだな」
穏やかな零の言葉に、真純ちゃんは形だけ引き下がった。その目が零から逸れたのを見計らって、トンッと肩を押しつける。
「面倒なら突き放せばいいのに。可哀想じゃない」
のらりくらりと躱して、フラストレーションは溜まる一方だろう。柔らかい言葉ばかり使うのも、逆に酷だ。
すると、零が呆れたように半眼になった。
「…それ、わざわざ自分を疑うように仕向けた君に言われたくないな」
「…ええと」
どうやらいらぬ藪をつついたようなので、出てきた蛇は見なかったことにした。
801人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
胡蝶(プロフ) - 藍色さん» コメントありがとうございます!もったいないお言葉です…が、とてもとても嬉しいです!語彙力捻り出しながら書いた甲斐がありました…。書くのが遅い上に煮詰まっていて遅筆に拍車がかかっておりますが、どうかお付き合いくださいませ。 (2022年8月17日 13時) (レス) @page14 id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
藍色(プロフ) - 作者様のキャラの感情表現、文才能力が凄すぎます…!度々一人で悶えながら読んでます!面白い作品に出会えて私は幸せです(´;ω;`)更新楽しみに待ってます! (2022年8月16日 3時) (レス) id: 82bbddf0f3 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - ねるさん» コメントありがとうございます!一気読み嬉しいです!書くのが遅くてお待たせしておりますが、頑張って更新いたします…! (2022年8月9日 15時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ねる - 一気読みしてしまいました!続き待ってます!更新頑張ってください(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎) (2022年8月8日 9時) (レス) @page27 id: a5b6221b88 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます!楽しんで頂けて嬉しいです!特に二幕はデレ期のつもりなので…距離感を詰めていく様子にお付き合い下さいませ! (2022年7月14日 20時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年6月25日 12時