Case.146 ページ33
「―――で、なんでこうなるのよ…」
こっそりと深いため息を吐いて、気だるげに目の前の状況を一瞥する。
そこでは警察が監視カメラの映像をチェックしていた。
休憩所で見かけたあのガールズバンドから、まさか死人が出るとはね…。
悲鳴を聞いて駆けつけてみれば、ドラムセットに突っ伏した状態で絶命していたのだ。
首には紐状の何かで絞められた痕と、それを引き剥がそうと引っ掻いた痕が残っていて、他殺による絞殺だと断定できた。
けど、スタジオ内には監視カメラがある。それを見れば、犯人は一目瞭然。
――の、はずだったのに。
「まさか、監視カメラを遮ってるなんてね…」
彼女達は、マイクスタンドの先にスマホをセットした自撮り棒をつけて、演奏の様子を録画していたらしい。その場所がちょうどカメラに被り、映像を半分遮断していたのだ。
おかげで、肝心のドラム周辺が完全に見えなくなっている。
全く意味がない。
あのグループはスタジオの常連で、いつもそうしてたらしいから、多分それを利用したんだろう。
で、容疑者は被害者と同じバンドメンバーの、あの3人…ってわけね。
担当はそれぞれ、ベース兼ボーカル、ギター、そしてキーボード。スタジオで仮眠中だった被害者の近くで、入れ替わり立ち替わり作業をしていたらしい。
ふと、服の裾を引っぱられた。ボウヤだ。
「ねぇ、Aさん」
「何、ボウヤ」
声を潜めて呼びかけてくるので、すとんとしゃがんで目線を合わせてやる。
「今回の事件、Aさんはどう見てる?」
どうやらこの小さな探偵は、私の意見を知りたいらしい。
――が。
「んー…まぁ、ボウヤが考えてるのと大して変わらないんじゃない?」
今の時点で言えるのは、犯人はあの3人のうちの誰かでまず間違いないってこと。
監視カメラが半分遮られてるとはいえ、角度的にカメラに全く映らず被害者に近寄ることはできない。外部の可能性は限りなくゼロに近いのだ。
「なんにせよ、まだ情報不足だからね。憶測で語りたくはないなぁ」
そう言って小首を傾げて見せれば、ボウヤは不服そうに口をとがらせた。
「…憶測と推測は違うよ」
「私にとってはどっちも似たようなものよ」
「でも、探偵は推測するのが基本で――」
抗議してきたボウヤは、私がにこりと笑うのを見て口を閉じる。すると、頭上からため息が聞こえてきた。
「…A」
諌めるように零に名前を呼ばれて、小さく肩をすくめる。子供相手に大人気ないと言いたいらしい。
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胡蝶(プロフ) - 藍色さん» コメントありがとうございます!もったいないお言葉です…が、とてもとても嬉しいです!語彙力捻り出しながら書いた甲斐がありました…。書くのが遅い上に煮詰まっていて遅筆に拍車がかかっておりますが、どうかお付き合いくださいませ。 (2022年8月17日 13時) (レス) @page14 id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
藍色(プロフ) - 作者様のキャラの感情表現、文才能力が凄すぎます…!度々一人で悶えながら読んでます!面白い作品に出会えて私は幸せです(´;ω;`)更新楽しみに待ってます! (2022年8月16日 3時) (レス) id: 82bbddf0f3 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - ねるさん» コメントありがとうございます!一気読み嬉しいです!書くのが遅くてお待たせしておりますが、頑張って更新いたします…! (2022年8月9日 15時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ねる - 一気読みしてしまいました!続き待ってます!更新頑張ってください(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎) (2022年8月8日 9時) (レス) @page27 id: a5b6221b88 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます!楽しんで頂けて嬉しいです!特に二幕はデレ期のつもりなので…距離感を詰めていく様子にお付き合い下さいませ! (2022年7月14日 20時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年6月25日 12時