Case.123 -The Darkest Nightmare- ページ4
ベッドのシーツに手をつくと、Aの手が応えるようにするりと首へ回る。
「……零」
呟きほどの小さな声に孕んだ熱が、僕に移って腹の底でずぐりと疼く。
ギシ、とベッドが軋んだ。いつも聞いている音のはずなのに、いやに緊張するのは何故だろう。
曝された白い肌をなぞれば、ピクリと小さく身動ぎした。
…2度目だ。彼女に触れるのは。
1度目は、実はあまり良く覚えていない。
ただ、本能のままに求める僕を、彼女が何も言わずに受け入れてくれたことは覚えている。
もったいないことをしたなと自嘲していると、Aが不思議そうに瞬いた。
「どうしたの?」
「…いや」
頬を撫で、こめかみを掻き上げてから、指通りのいい栗色の髪を一房掬い取る。
リップ音を鳴らして唇を落とし、照れたように視線を逸らす彼女の額にもキスをした。
アピールしている時から思っていたが、Aは気障な素振りにあまり耐性がないらしい。
どう反応していいか分からないのだろうが、こうして素っ気ない態度を取るのは、やっぱりどこか猫っぽい。
覚えていたい。――全部。
「…A」
耳元で名前を呼ぶと、肩をすくめるのも。
「っ、」
首筋に痕をつけると、息を詰めるのも。
「ん、ふ…ぁ」
キスをした時の、熱い吐息も。
そして。
「ぁ…、れ、い」
切なげに僕を呼ぶ―――その声を。
忘れたくは、ないから。
「…なぁ、もっと…僕を呼んで」
「君の声を、聴かせて―――A」
ぎしりと軋んだベッドの音は――、もう気にならなかった。
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胡蝶(プロフ) - 藍色さん» コメントありがとうございます!もったいないお言葉です…が、とてもとても嬉しいです!語彙力捻り出しながら書いた甲斐がありました…。書くのが遅い上に煮詰まっていて遅筆に拍車がかかっておりますが、どうかお付き合いくださいませ。 (2022年8月17日 13時) (レス) @page14 id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
藍色(プロフ) - 作者様のキャラの感情表現、文才能力が凄すぎます…!度々一人で悶えながら読んでます!面白い作品に出会えて私は幸せです(´;ω;`)更新楽しみに待ってます! (2022年8月16日 3時) (レス) id: 82bbddf0f3 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - ねるさん» コメントありがとうございます!一気読み嬉しいです!書くのが遅くてお待たせしておりますが、頑張って更新いたします…! (2022年8月9日 15時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ねる - 一気読みしてしまいました!続き待ってます!更新頑張ってください(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎) (2022年8月8日 9時) (レス) @page27 id: a5b6221b88 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます!楽しんで頂けて嬉しいです!特に二幕はデレ期のつもりなので…距離感を詰めていく様子にお付き合い下さいませ! (2022年7月14日 20時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年6月25日 12時