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Case.142 ページ29

真純ちゃんがじっと私を観察している。存分に疑ってくれて構わないけど、その膠着は一瞬で溶けた。

「ウソ!世良ちゃんとAさんって知り合いだったの!?」
「もしかしてアメリカにいた時から!?」

興味津々な女子高生達が食いついてきて、私達は思わず顔を見合わせた。

「アメリカにいた時って…Aさん、日本に住んでるんじゃないのか?」
「ええ。国籍はアメリカで、日本には休暇を使って遊びに来てるの。真純ちゃんはどうしてアメリカに?」
「…留学だよ。日本には最近帰って来たんだ」

なんだか微妙な含みを感じる。
…当たり前か。
真純ちゃんが“彼女”と行動を共にしてるのなら、この子がいたのはイギリスのはず。なんでアメリカ帰りになってるのかは分からないけど、多分“彼女”の指示だろう。

「へぇ、こんな偶然もあるのね」
「…そうだな。驚いたよ」

相変わらず探るような目を向けてくる。頭の回転は速いんだろうけど、素直すぎて諜報には向かないな。

「あの、じゃあ結局2人が知り合ったのって…?」

答えが出ないことに焦れたのか、園子ちゃんが話をつついてきた。これ以上の放置は可哀想か。

「行きつけのラーメン屋があるんだけど、真純ちゃんもそこの常連だったの」
「君達もこの前行っただろ?“死ぬほどヤバイ”ラーメン小倉!」
『ええっ!?』

まさかの全員から驚かれた。そんなに意外?

「そういえば世良ちゃん、あの時美人の常連仲間がいるって言ってたよね…」
「うん…Aさんのことだったんだね…」
「でもAさんがラーメンって、イメージないわ…」

ボソボソと女子高生達とボウヤの声が聞こえるけど、好物にイメージとかどうでもいい。

「それで、皆はなんの話してたの?」

強制的に話題を断ち切ってやると、園子ちゃんがあっと声を上げた。

「本題忘れるところだったわ!!」

そして勢いよくカウンターを振り返り、コーヒーを淹れている零に狙いを定めた。

「ねぇ安室さん!私達のバンド入ってよ!」
「ええ?」
「は?」

…バンド?

脈絡がなさすぎて意味が分からない。
零は零で困惑してるし、というかそもそも。

「貴方達、バンドなんて組んでたの?」

それこそイメージないな。

「ついさっき、園子が結成しようって言い出して…」
「へぇ…でも、なんで透を?」

ちらりと零に目をやると、少し困ったように眉を下げた。

「色々あって、さっき少しだけ披露したんだよ」
「そうなの?」

残念だな。もっと早く来ればよかった。

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胡蝶(プロフ) - 藍色さん» コメントありがとうございます!もったいないお言葉です…が、とてもとても嬉しいです!語彙力捻り出しながら書いた甲斐がありました…。書くのが遅い上に煮詰まっていて遅筆に拍車がかかっておりますが、どうかお付き合いくださいませ。 (2022年8月17日 13時) (レス) @page14 id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
藍色(プロフ) - 作者様のキャラの感情表現、文才能力が凄すぎます…!度々一人で悶えながら読んでます!面白い作品に出会えて私は幸せです(´;ω;`)更新楽しみに待ってます! (2022年8月16日 3時) (レス) id: 82bbddf0f3 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - ねるさん» コメントありがとうございます!一気読み嬉しいです!書くのが遅くてお待たせしておりますが、頑張って更新いたします…! (2022年8月9日 15時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ねる - 一気読みしてしまいました!続き待ってます!更新頑張ってください(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎) (2022年8月8日 9時) (レス) @page27 id: a5b6221b88 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます!楽しんで頂けて嬉しいです!特に二幕はデレ期のつもりなので…距離感を詰めていく様子にお付き合い下さいませ! (2022年7月14日 20時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年6月25日 12時

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