Case.141 ページ28
ポアロに入ろうとすると、店からガラの悪そうな二人組の男が出てきた。足早に去っていく後ろ姿を横目に、入れ替わるようにして店内へ入る。
「いらっしゃいませ――Aさん!」
「こんにちは、梓さん」
パッと顔を輝かせる梓さんに笑みを返して、テーブル席に目を向けた。
「Hi,sugar!―――会いに来たわよ」
そう言って、きょとんと丸くなった青い瞳ににやりと笑う。零は柔らかく口元を緩めたかと思うと、すぐに安室らしい照れたような笑みで上書きした。
「いらっしゃい、A」
「透、アメリカン1つね」
「分かった」
零が手早くバッシングをしてカウンターに戻っていく。代わりに、不思議そうにこっちを見る女子高生達が目に入った。
「…シュガー…?」
「え、砂糖…?」
ぶつぶつと言ってるのが聞こえて、思わず吹き出した。そしてそれは、同じテーブルにいたボウヤともう1人の彼女も同じだったらしい。
「違うよ園子姉ちゃん。今のは言葉通りの意味じゃなくて、恋人に呼びかける時に使う言葉!」
「蜂蜜の甘さにかけて“honey”とか呼ぶのと同じさ。…でも、驚いたな」
ちらりと視線が私に向く。口元に八重歯が覗き、彼女―――真純ちゃんは不敵に笑った。
「まさかAさんとこんなところで会うなんて思わなかったよ。…しかも、話に聞いてた彼氏がその人だったなんて」
それに、私もにこりと笑う。
「私も驚いたわ。まさか貴方が、蘭ちゃんと園子ちゃんの友達だったなんて」
あくまでも自然に反応を返すと、真純ちゃんはなんとも言えない顔で口を閉じた。それに、私は胸の内でほくそ笑む。
成功だ。
実は、私がこのタイミングでポアロに顔を出したのは偶然じゃない。
30分ほど前、零からメールが届いた。
《赤井の妹と接触したよ》
それを受けて、やりかけの仕事を切り上げ、急ぎ足でポアロへとやって来たのが真相だ。
ラーメン小倉で真純ちゃんと接触してしまったことは、収穫も大きかったけど予想外のことだった。おかげで元々の思惑とは違う関係性に発展してしまって、どう修正したものかと悩んでたんだけど。
零がいて助かったわ。
昔、バーボンの報告で“ライの妹に会った”と聞いたことを思い出した。
真純ちゃんは秀一をとても慕ってたみたいだし、偶然鉢合わせたのなら強く印象に残ってることだろう。そう思って、零に真純ちゃんと接触したら教えてほしいとお願いしたのだ。
そして、どうやら私の思惑通りに事が運んだらしい。
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胡蝶(プロフ) - 藍色さん» コメントありがとうございます!もったいないお言葉です…が、とてもとても嬉しいです!語彙力捻り出しながら書いた甲斐がありました…。書くのが遅い上に煮詰まっていて遅筆に拍車がかかっておりますが、どうかお付き合いくださいませ。 (2022年8月17日 13時) (レス) @page14 id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
藍色(プロフ) - 作者様のキャラの感情表現、文才能力が凄すぎます…!度々一人で悶えながら読んでます!面白い作品に出会えて私は幸せです(´;ω;`)更新楽しみに待ってます! (2022年8月16日 3時) (レス) id: 82bbddf0f3 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - ねるさん» コメントありがとうございます!一気読み嬉しいです!書くのが遅くてお待たせしておりますが、頑張って更新いたします…! (2022年8月9日 15時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ねる - 一気読みしてしまいました!続き待ってます!更新頑張ってください(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎) (2022年8月8日 9時) (レス) @page27 id: a5b6221b88 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます!楽しんで頂けて嬉しいです!特に二幕はデレ期のつもりなので…距離感を詰めていく様子にお付き合い下さいませ! (2022年7月14日 20時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年6月25日 12時