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Case.76 ページ42

一体今日はどうしたんだ!?

どれもこれも素直に応じてくれるなんて、今日は槍でも降るんだろうか。
というか、僕の作ったケーキが食べたいってどういうつもりなんだ!?
嬉しさと驚きでいっそ心臓が痛い。ともすればにやけてしまいそうな顔を片手で覆い隠す。
ダメだ、“安室透”はこんな顔しない。見せられない。

どうにか気持ちを落ち着かせて、やっとコーヒーの準備に取り掛かる。それとなく彼女の様子を盗み見ると、頬杖をついたまま目を閉じていた。寝ようとしているわけではなさそうなので、待っている間だけ微睡んでいるんだろう。

……静かだな。

梓さんを始め、何故か誰もが息を潜めてこちらを見守っているものだから、まるでこの店に僕達2人だけのような気さえしてくる。こんなにも人が居るのに、店内には僕が動く音だけが響いていた。

「…お待たせしました。チーズケーキとアイスコーヒーです」
「…ありがと」

ことんと目の前に置かれたタイミングで目を覚まし、そのままケーキを一口食べる。


「――うん、おいし」


「っ、」

無駄に緊張して待っていた所為か、その一言で舞い上がりそうだ。
梓さんが常連客と抱き合う勢いで喜んでいる。
僕も本当に心からそこに混ざりたい。

「さっきから気になってたんだけど、なんでそんなに緊張してるわけ?」
「貴方の所為ですが?」

しまった、間髪入れずに言い返してしまった。そろりとAを見ると、心外だとでも言うような顔をしている。嘘だろ本気か。

「…貴方が僕の担当メニューを注文したの、初めてなんですよ」

今までは僕が無理やりデザートをつけていただけだ。わざわざ注文した上に、あんな言い方をされるなんて心臓に悪すぎる。

「ああ…まぁ、そうかもね」

歯切れの悪い返事を聞く限り、どうやら自覚はあるらしい。

「そうなんです。…だから、どうしてかなと」

すると、Aはじっとこちらを見て、小さくなんだと呟いた。

「この前のデートが効いたと思わないあたり、意外と自信ないのね」

「えっ、じゃあ」
「まぁ違うけど」

違うのかよ。

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胡蝶(プロフ) - 明里香さん» ご報告ありがとうございます。修正いたしました! (2022年8月2日 2時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 82話、名前変換出来ていない箇所があります。 (2022年8月1日 7時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - 明里香さん» ご報告ありがとうございます!修正いたしました。ご不便をおかけいたしました…! (2022年7月31日 17時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 66話、名前変換出来ていない箇所があります。 (2022年7月31日 11時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - cherry*さん» こちらこそです!更新本当に遅いのですが、どうか最後までお付き合いください! (2022年5月27日 12時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年5月19日 5時

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