微睡みに落ちる２【降谷零/安室透】

Case.72 ページ38

数日ぶりに自宅のドアを開け、バタバタと走りながら鞄と上着を放り出す。時計を見れば、針はすでに21時半を通り過ぎていた。
まずい、また遅刻だ！
夕飯用に買ったコンビニのおにぎりを脇に置き、スマホで目的のアプリを起動する。

＞＞＞『怪物コレクション』＜＜＜

音楽が流れて、トップページが開かれる。
急いでフレンドリストを確認し、相手がオンラインになっているのを見て、慌ててゲーム内のロビーへ移動した。

《ナインさん！すまない、遅くなった！》
《あ。来たね、ユーヤさん》

チャットを送ったら即レスだった。やはり待たせてしまったらしい。

《残業が長引いてしまって…》
《あは、やっぱり。そうだと思ったよ。相変わらずブラックだなぁ》

ケラケラと笑ってくれるが、約束の時間は21時半だったのだ。すでに10分ほど過ぎてしまっている。
そしてさらに申し訳ないのは、これが今回に限った話ではないということだ。

《いつも本当にすまない…僕のレベリングに付き合ってもらっているのに…》

ナインさんとフレンド登録を行ってから、すでに何度か時間を合わせてログインしている。だが、大抵僕の遅刻から始まるのだ。

《何度も言うけど、気にしなくていいって。ユーヤさんが忙しいのは初めに聞いてたし、それでもいいって言ったのはこっちなんだから》
《そう言ってもらえると助かる》

おおらかな人だ。自分だったら、いつも遅刻するような相手は願い下げだというのに。
さすがREIちゃんからの繋がりといったところだろう。

《それで？ユーヤさんの事だから、残業してきたってことは帰ってすぐにゲーム開いてるんだろうけど…夕飯は食べたの？》

うっ、目ざとい。

《…まだだ》
《だと思ったよ。チャットしながらなら待っててあげるから、今のうちに食べちゃいな》

なんていい人なんだ。

《ありがとう！昼もろくに食べていなかったから、だいぶ限界だったんだ》
《えっ、そんなに忙しいの？》
《実は、急な案件が舞い込んできて。だから、またログイン数が減りそうなんだ》

降谷さんが、組織の方で嫌な動きを察知したらしい。まだ調査の段階で確実性はないが、万が一に備えて公安部総出で対策を行っている。
出来れば杞憂であってほしいが、降谷さんが掴んだ情報だからな。軽視はできない。

《そっか。詳しい期間が分かったら、また教えておいてもらえると助かる》
《了解》

こんなにも僕の予定に合わせてもらってしまうなんて…ナインさんには頭が上がらないな。

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