Case.65 ページ31
うわ、すっげ───
「──イテッ!?」
突然視界の外から飛んできた何かが額を直撃し、思わず尻もちをつく。
「イテテ……え、なに…?」
何事かと周りを見回してみると、すぐ近くにころりと飴が転がっていた。ポップなデザインが特徴的な棒付きのやつ。
「これはボウヤが首を突っ込んでいいものじゃない。子供はキャンディでも食べて大人しくしてなさい」
どうやらこの飴はAさんが投げたものらしい。見ると、ひらひらと片手を振って、暗に出て行けと言っている。
やべ。
「…はぁい、ごめんなさーい…」
飴を拾って、俺は逃げるようにその場を後にした。
「ふぃ〜…」
書斎のソファに倒れこみ、手に持っていた飴をぼんやりと見つめる。
仕事中のAさん、初めて見たな。
安室さんや赤井さんに聞いてはいたけど、あの処理の速さは相当だ。何をしてるのか全く分からなかった。
灰原といい勝負…いや、それより断然上手だ。
こうして叩き出されたところを見ると、たぶんFBIの関係だろう。Aさんの言う通り、俺の出る幕じゃない。
ここは大人しく、当初の予定通りホームズに浸るか──。
◇◇◇
「やあ、ここにいたのかボウヤ」
「…っあ、え…赤井さん!」
不意に頭上から声をかけられて、俺は文字通り飛び跳び上がった。
「ああ、すまない。驚かせるつもりはなかったんだが」
「ううん、僕が本に集中してただけだから…」
えへへと笑うと、赤井さんは俺の周りに広がっている本を拾い上げて、納得したように声を上げた。
「そういえば、君もシャーロキアンだったな」
「うん。赤井さんも読む?」
その手に持っているのは『四つの署名』だ。好きな愛好家は多い。
「魅力的な誘いだが、今は遠慮しておこう」
「あれ、そう?」
まさか断られるとは思わなかった。
赤井さんも結構なシャーロキアンだし、乗ってくるかと思ったんだけどな。
「実は、ひと仕事終えた同僚が糖分を求めていてね。ボウヤもいるならと、ティータイムに誘いに来たんだ」
君は昼食も抜いているだろうと言われて、思い出したように空腹を感じた。時計を見ればそろそろ15時で、昼時はとっくに過ぎている。
そりゃ腹も減るわけだ。
「同僚…って、Aさん仕事終わったの?」
「ああ、少し前に決着したそうだ」
「へぇ…分かった。じゃあ行こうかな」
なんとなく気になる言い方だけど、とりあえず今は横においておこう。読み終わった本を近くの山に適当に積み上げて、赤井さんのあとに続く。
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胡蝶(プロフ) - 明里香さん» ご報告ありがとうございます。修正いたしました! (2022年8月2日 2時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 82話、名前変換出来ていない箇所があります。 (2022年8月1日 7時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - 明里香さん» ご報告ありがとうございます!修正いたしました。ご不便をおかけいたしました…! (2022年7月31日 17時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 66話、名前変換出来ていない箇所があります。 (2022年7月31日 11時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - cherry*さん» こちらこそです!更新本当に遅いのですが、どうか最後までお付き合いください! (2022年5月27日 12時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年5月19日 5時