Case.Gimlet ページ1
潜入を終えてセーフハウスに戻ったのは、午前4時を回っていた。
「…おかえり」
リビングでノートパソコンに向き合っていたギムレットは、その一瞬だけ視線を寄越して、すぐに元の場所へ戻す。
夜通し起きていたのか。
帽子や上着を脱いで、汗が伝う首元をあおぐ。諜報で潜入する時は、痕跡を残さないよう長袖長ズボンに帽子が基本スタイルだ。しかし、夜とはいえ夏に着るのは辛いものがある。
「データ」
「…どうぞ」
ポケットに入れていたUSBメモリを渡すと、彼女はパソコンでデータの中身をチェックしていく。その画面をソファの後ろで覗いていると、ギムレットが小さくOKと呟いた。
「照合はやっておくから、アンタはもう行っていいよ。終わったらタブレットに送る」
「ありがたいですが…いいんですか?」
「サポートだし、これくらいはしてあげる」
彼女は慣れた手つきでキーボードを叩く。すると、画面にパーセンテージが表示された。
「…これもしかして、貴方が独自に使ってるシステムですか?」
見たことのないスタイルのシステムに興味を惹かれて聞いてみる。予想は的中していた。
「そう。システムは基本自作か改造してる。その方がやりやすいから」
「簡単に言いますね…」
システムの自作など、そう易々とできるものじゃない。それでいて実績も出ているのだから、如何にギムレットが有能であるかが窺える。
「…で、いつまでそこに居るの」
パソコンを見られているのが気に入らないのか、彼女の顔にははっきりと邪魔と書かれていた。
「すみません、つい」
「眠くないなら、シャワーでも浴びてきたら?」
外、だいぶ暑かったみたいだし。
そう付け加えられて、はたと動きを止める。確かに暑かった。帰ってすぐに首元をあおぐほどに。
つまり。
もしかしなくても、今の僕って結構汗くさかったり…?
気になるといてもたってもいられず、すすっと横に移動する。人ひとり分空いた空間に気づいて、ギムレットが怪訝そうにこちらを見た。
「…何、その離れ方」
「いえ、その…嫌なものは嫌でしょうし」
そう言うと、彼女はほんの少し眉を顰めた後、すぐに何か思い至った顔をした。
「それ、私は嫌いじゃないけど」
汗くさいのが?
思わず口から飛び出そうになって、慌てて飲み込んだ。危ない。
「で、ですが、マナーというか、エチケットというか、…好みというか」
しどろもどろになりながら言葉を並べ立てると、ふぅんと今ひとつ納得していない返事が返ってきた。
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胡蝶(プロフ) - 明里香さん» ご報告ありがとうございます。修正いたしました! (2022年8月2日 2時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 82話、名前変換出来ていない箇所があります。 (2022年8月1日 7時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - 明里香さん» ご報告ありがとうございます!修正いたしました。ご不便をおかけいたしました…! (2022年7月31日 17時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 66話、名前変換出来ていない箇所があります。 (2022年7月31日 11時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - cherry*さん» こちらこそです!更新本当に遅いのですが、どうか最後までお付き合いください! (2022年5月27日 12時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年5月19日 5時