Case.42 ページ50
ずっとカウンターの中を動き回ってるし、今注文が入ったから手が離せなくなるはずだ。
「僕はもっと貴方と話していたいんですが…仕方ないですね」
梓さんの様子を見て、零は露骨に残念そうな顔をしながら私の髪を掬い取った。流れるようにそこへキスを落とされて、何事もなかったかのようにカウンターへと戻っていく。
「……Aさん」
「…何も言わないで…」
子供達からの生温い視線が突き刺さっていたたまれない。分かってるわよ無駄な抵抗だってことくらい。顔が赤いのも隠せてないし、心臓も全力疾走してるし。私だってFBIの潜入捜査官だからハニトラ的なものなら耐性あるけど、こんなに純粋にぶつけられたことってないからどうすればいいか分かんないのよ分かって。
コーヒーに口をつけながらどうにか視線をやり過ごしていると、梓さんがカラスミパスタを持ってきてくれた。
「お待たせしました、Aさん!」
「あ、梓さぁん…」
ああ…癒しの笑顔…!
「安室さんへの用事も済んだみたいで何よりです!」
「ええ…毎日押しかけて悪かったわね」
しかも朝から1日中入り浸っていたから、邪魔な時もあったかもしれない。
「ふふふ、そんなことないですよ!むしろ、このまま常連になってほしいくらい!」
「え…それはちょっと…」
むしろ零がいるからしばらく近寄りたくない。
すると、梓さんは断られると思ってなかったのか、しゅんと眉をハの字に下げた。
「だ、ダメですか…?」
「う…その、しばらくは外食控えようかなって…」
適当な理由をつけてそろりと様子をうかがうと、とてつもなく残念そうにしているのが見て取れた。
「せっかくAさんと仲良くなれたのに…」
こ、心が痛い…!
「でも、Aさんも休暇で日本に来てるわけだし、ポアロにばかりいるわけにもいかないですよね…」
「わ、分かった分かった!毎日は無理だけどまた来るから、そんな顔しないで?」
まさかこんなに残念がられるとは思わなかった。私も梓さんには癒されてたし、会えるものなら会いたい。
梓さんはパッと顔を輝かせて、じゃあ待ってますねと嬉しそうにテーブルを離れていく。それを見送ると、カウンターにいた零と目が合った。
その口元がしてやったりとばかりに吊り上げられていて、私はやっと零の思惑を理解したのだった。
「…Aさん」
「ボウヤ助けて…」
「あの人相手にそれは無理だよ…」
やっぱり私の味方はいないらしい。
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胡蝶(プロフ) - カイさん» コメントありがとうございます!キャラクターの“らしさ”の部分は結構気にして書いているので、気づいて頂いてとても嬉しいです!更新頑張ります! (2022年5月19日 23時) (レス) id: 1da46a4e4a (このIDを非表示/違反報告)
カイ - えええ…素敵すぎて今日初めて拝見したんですけど、全て見終わっちゃいました…。キャラクターの性格をよく噛み砕いて書いてる印象を受けました。コナンファンには絶対読んでもらいたいー! (2022年5月19日 0時) (レス) @page35 id: 6aad3c552e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年5月18日 2時